垂れ乳(下垂乳房)を改善する手術|乳房挙上術・豊胸術とは

バストの形は、女性の美しさや自信に大きく関わります。しかし、加齢や出産、授乳、急激な体重変化など、様々な要因でバストは下垂してしまうことがあります。

「垂れ乳」とも呼ばれるこの状態は、多くの方が悩みを抱える美容上の問題の一つです。

この記事では、垂れ乳(下垂乳房)の原因から、その改善方法である乳房挙上術や豊胸術について詳しく解説します。

この記事を書いた人

アリエルバストクリニック 院長 石塚 紀行

石塚 紀行
アリエルバストクリニック 院長
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資格・所属

  • 日本形成外科学会専門医
  • コンデンスリッチファット(CRF)療法認定医
  • VASER Lipo認定医
  • Juvederm Vista 認定医
  • 乳房再建用エキスパンダー/インプラント実施医師
  • 日本形成外科学会所属
  • 日本美容外科学会(JSAPS)所属

【略歴】
脂肪吸引、豊胸を専門としている形成外科専門医。獨協医科大学医学部卒業後、獨協医科大学病院形成外科・美容外科入局。足利赤十字病院形成外科、獨協医科大学埼玉医療センター 形成外科学内助教、THE CLINIC大阪院・名古屋院の副院長を経て2024年、名古屋にARIEL .BUST.CLINIC(アリエルバストクリニック)を開院。

理想のバストを手に入れるために、焦って病院選びをする必要は全くありません。ご自身の将来のためにも、すぐに施術をすすめたり、勧誘を行うクリニックはぜひ避けるようにしていただきたいと思います。

施術で大切なことは、バストの立体的な形状評価と、ご自身の体型や皮膚の弾力性、乳腺組織の状態、胸郭の形状などに合わせた丁寧なプランニングです。それは時として、ご希望の方法ではない施術がベストだという場合もあります。

アリエルバストクリニックは、自然な仕上がり、バレない脂肪吸引や脂肪注入、バストアップの為の豊胸手術に特化したクリニックです。乳房再建から美容目的の豊胸まで、全国から患者様にお越しいただいています。傷跡や傷のケアに形成外科専門医としての知識と技術をもって、お一人おひとりととことん向き合っています。

このサイトでは豊胸手術・バストアップに関連する多くの記事を書いていますので、安全性と美しさを両立するためにも、まずはぜひ患者様自身で知識をつけた上でご希望のクリニックへ相談されるようにしてください。

目次

垂れ乳(下垂乳房)とは?その原因とセルフチェック

垂れ乳、医学的には乳房下垂と呼ばれる状態は、バストが本来の位置よりも下方に垂れ下がった状態を指します。見た目の問題だけでなく、コンプレックスの原因となることも少なくありません。

まずは垂れ乳の定義や原因、ご自身でできる簡単なチェック方法について見ていきましょう。

垂れ乳の定義と医学的な分類

乳房下垂は、乳頭の位置と乳房下溝(アンダーバストのライン)の関係によってその程度が分類されます。一般的に、乳頭が乳房下溝よりも下に位置する場合に下垂と判断されます。

美容外科の分野では、より詳細な分類基準を用いて患者様一人ひとりの状態に合わせた治療法を提案します。

乳房下垂の主な分類(Simonの分類などに基づく)

下垂の程度乳頭の位置主な特徴
正常乳房下溝より上方ハリがあり、上向きのバスト
軽度下垂 (Grade 1)乳房下溝と同じ高さ、または1cm以内下方乳房組織の下半分がやや下垂
中等度下垂 (Grade 2)乳房下溝より1~3cm下方乳頭は下向き、乳房組織の多くが下垂
重度下垂 (Grade 3)乳房下溝より3cm以上下方乳頭は完全に下向き、乳房全体が著しく下垂
仮性下垂乳頭は乳房下溝より上方だが、乳腺実質の下半分が下垂乳頭の位置は保たれているが、バストの下部が垂れている状態

これらの分類はあくまで目安であり、実際の診断は医師がバスト全体の形状や皮膚の弾力性などを総合的に評価して行います。

加齢だけではない!垂れ乳を引き起こす多様な原因

垂れ乳の原因は加齢によるものと思われがちですが、実際には様々な要因が複雑に絡み合っています。

垂れ乳の主な原因

  • クーパー靭帯のゆるみ・断裂
  • 皮膚の弾力低下
  • 乳腺組織の萎縮
  • 急激な体重変動
  • 妊娠・授乳
  • 不適切な下着の着用

クーパー靭帯は乳腺組織を支える重要な組織ですが、一度伸びたり切れたりすると元に戻りにくい性質があります。また、皮膚のコラーゲンやエラスチンの減少は、バスト全体のハリを失わせる原因となります。

自宅でできる簡単セルフチェック方法

ご自身のバストが下垂しているかどうか、簡単な方法でチェックできます。鏡の前に立ち、リラックスした状態で確認してみましょう。

垂れ乳セルフチェックポイント

チェック項目確認方法下垂の可能性
乳頭の位置乳房下溝(アンダーバストのライン)と乳頭の高さを比較乳頭が乳房下溝より下にあれば下垂の可能性あり
ペンシルテスト乳房下溝に鉛筆を挟み、手を離しても落ちないか確認鉛筆が落ちなければ下垂の可能性あり
バストの形状バスト上部のボリュームが減り、下部に重心があるか確認「そげ胸」「しずく型」が顕著な場合

これらのチェックはあくまで簡易的なものです。正確な診断や適切なアドバイスは、専門のクリニックで受けることを推奨します。

垂れ乳が心身に与える影響

垂れ乳は、見た目の変化だけでなく精神的な影響を及ぼすこともあります。好きなデザインの服を選べなくなったり、温泉やプールに行くことに抵抗を感じたりするなど、日常生活における自信の低下につながってしまうことも。

また、肩こりや姿勢の悪化といった身体的な不調を訴える方もいます。

これらの悩みは決して些細なものではなく、QOL(生活の質)に関わる重要な問題です。

乳房挙上術(マストペクシー)とは?手術の種類と特徴

乳房挙上術は、下垂した乳房を吊り上げて、若々しく美しい形のバストを取り戻すための手術です。皮膚のたるみや乳腺組織の位置を調整することで、バストの形を根本から改善します。

乳房挙上術の基本的な考え方や手術の種類、それぞれの特徴について解説します。

乳房挙上術の基本的な考え方

乳房挙上術の目的は、単にバストを小さくしたり大きくしたりするのではなく、「下垂したバストを適切な位置に戻し、美しい形に整える」ことです。

このため、余分な皮膚を切除し乳頭と乳輪を適切な位置に移動させ、必要に応じて乳腺組織を再配置します。

手術計画は、患者様の下垂の程度、皮膚の質、乳腺の量、そして希望するバストの形を総合的に考慮して決定します。

切開方法による乳房挙上術の種類

乳房挙上術には、主に切開する範囲や形状によっていくつかの術式があります。下垂の程度やバストの状態によって適した方法が異なります。

乳輪周囲切開法(ドーナツ法、ペリアレオラー法)

乳輪の周囲に沿ってドーナツ状に皮膚を切開し、余分な皮膚を切除して縫合する方法です。比較的軽度の下垂に適しています。

傷跡が乳輪の境目に隠れやすいため、目立ちにくいという利点があります。

垂直切開法(ロリポップ法、バーティカル法)

乳輪周囲の切開に加えて、乳輪の下縁から乳房下溝まで縦方向に皮膚を切開する方法です。

中等度の下垂に適しており、乳輪周囲切開法よりも多くの皮膚を切除できるため、より効果的にバストを引き上げることができます。傷跡は乳輪周囲と縦方向の線になります。

逆T字切開法(アンカー法、ワイズパターン法)

乳輪周囲、乳輪下縁から乳房下溝までの垂直切開に加え、乳房下溝に沿って横方向に皮膚を切開する方法です。最も広範囲に皮膚を切除できるため、重度の下垂や、バストのボリュームが大きい場合に適しています。

傷跡は逆T字型になりますが、最も効果的なリフトアップが期待できます。

各術式のメリット・デメリット比較

どの術式を選択するかは、医師とのカウンセリングを通じて、ご自身の状態と希望を照らし合わせながら慎重に決定することが大切です。

乳房挙上術の術式別比較

術式適応(下垂の程度)主なメリット
乳輪周囲切開法軽度傷跡が目立ちにくい
垂直切開法中等度効果的なリフトアップ、比較的自然な仕上がり
逆T字切開法重度、大きなバスト最も効果的なリフトアップ、大幅な形態改善が可能

デメリットとしては、いずれの術式も傷跡が残ること、ダウンタイムが必要なことなどが挙げられます。傷跡の治癒過程や目立ちにくさには個人差があります。

乳房挙上術が適している方の特徴

乳房挙上術は、以下のようなお悩みを持つ方に適した手術と言えます。

乳房挙上術を検討する方の主な悩み

  • バスト全体が垂れ下がっている
  • 乳頭が下向きになっている
  • バスト上部のボリュームが失われた
  • デコルテラインが寂しくなった
  • 出産・授乳後にバストの形が変わった

ただし、全身状態や既往歴によっては手術が適さない場合もあります。必ず医師による診察とカウンセリングを受けてください。

豊胸術と組み合わせる垂れ乳改善

垂れ乳の改善において、乳房挙上術だけでなく、豊胸術を組み合わせることでより理想的なバストの形とボリュームを目指せる場合があります。

特に、バストのボリュームが元々小さい方や、下垂とともにボリュームも失われてしまった方にとって有効な選択肢となります。

垂れ乳に対する豊胸術の役割

垂れ乳の方は、バストの位置が下がっているだけでなく、バスト上部のボリュームが不足している(いわゆる「そげ胸」)ことが多いです。

乳房挙上術でバストの位置を引き上げることはできますが、失われたボリュームを補うことはできません。

そこで豊胸術を併用することでバストの位置とボリュームの両方を改善し、より若々しくハリのあるバストを実現します。

シリコンバッグ豊胸と乳房挙上術の併用

シリコンバッグ豊胸は、乳腺下や大胸筋下にシリコン製のバッグを挿入することでバストのボリュームアップを図る手術です。

乳房挙上術と同時に行うことでバストの位置を上げつつ、希望する大きさにバストを形成することができます。

特に、大幅なサイズアップを希望する場合や、全体的にボリュームが欲しい場合に適しています。

シリコンバッグ併用のポイント

項目特徴考慮点
ボリューム大幅なサイズアップが可能バッグの種類・サイズ選択が重要
形状多様な形状から選択可能自然な仕上がりを目指す
持続性長期的なボリューム維持定期的な検診を推奨

バッグの種類や挿入位置は、患者様の体型や希望、乳房の状態によって医師が判断します。

脂肪注入豊胸と乳房挙上術の併用

脂肪注入豊胸は、ご自身の太ももやお腹などから採取した脂肪をバストに注入することでボリュームアップを図る手術です。

自己組織を利用するためアレルギー反応のリスクが低く、より自然な感触と見た目が期待できます。

乳房挙上術と組み合わせることで、バストの形を整えつつ、特にデコルテラインなど部分的なボリュームアップにも対応しやすいのが特徴です。

脂肪注入併用のポイント

項目特徴考慮点
自然さ自己組織のため自然な感触注入量や定着率に個人差
部分痩身効果脂肪吸引部位の部分痩せも期待吸引できる脂肪量が必要
アレルギー自己組織のため拒絶反応のリスクが低いしこりや石灰化のリスクも考慮

注入する脂肪の質や量、注入技術によって仕上がりが左右されるため、経験豊富な医師を選ぶことが大切です。

同時手術のメリットと注意点

乳房挙上術と豊胸術を同時に行うことには、いくつかのメリットがあります。

まず、一度の手術でバストの位置とボリュームの両方を改善できるため、身体的な負担やダウンタイムを一度で済ませることができます。また、トータルでバランスの取れた美しいバストラインを形成しやすいという点も挙げられます。

一方で、注意点としては手術時間が長くなる傾向があること、術後の腫れや内出血が単独の手術よりも強く出ることがあることなどが考えられます。

また、それぞれの術式のリスクを理解しておくことも重要です。医師と十分に話し合い、ご自身にとって適切な方法を選択しましょう。

あなたの「理想のバスト」を形作るために。クリニック選びとカウンセリングの重要性

垂れ乳の悩みは非常にデリケートであり、一人ひとり理想とするバストの形も異なります。

だからこそ、マニュアル通りの治療ではなく、あなたの想いに寄り添い、医学的根拠に基づいたオーダーメイドの提案をしてくれるクリニックを選ぶことが満足のいく結果への第一歩です。「どこで手術を受けても同じ」ではありません。

画一的ではない、オーダーメイドのバストデザイン

多くのクリニックが「患者様一人ひとりに合わせた治療」を謳っていますが、その深さは異なります。

当院では、単に下垂の程度を測るだけでなく、あなたのライフスタイル、ファッションの好み、そして「どのような自分になりたいか」という内面的な希望まで丁寧にヒアリングします。

その上で医学的な知見と美的センスを融合させ、あなただけのバストデザインを提案します。

例えば、同じ「自然な仕上がり」を希望されても、その「自然」の捉え方は人それぞれです。その微妙なニュアンスを汲み取り、具体的な形にしていくのが私たちの役割です。

垂れ具合だけではない トータルバランスを考慮した提案

美しいバストとは、単に垂れていない、大きいということだけではありません。身長、体重、肩幅、ウエストラインといった全身のバランスの中で、調和が取れていることが大切です。

私たちは、バスト単体で見るのではなく、あなたの全身のプロポーションの中で最も美しく見えるバストの形、大きさ、位置を追求します。

このためには豊富な経験と美的感覚、そして多角的な視点が必要です。時には、ご自身が気づいていない魅力を引き出す提案をすることもあります。

カウンセリングで重視するポイント

  • 現在のバストの状態(下垂度、皮膚の質、乳腺量など)
  • 理想とするバストのイメージ(写真などあれば持参も有効)
  • ライフスタイルや将来の予定(妊娠・授乳の希望など)
  • 手術に対する不安や疑問点

「こんなはずじゃなかった」を防ぐためのカウンセリング活用法

手術後の後悔で最も多いのが、「思っていたイメージと違う」というものです。これを防ぐためには、カウンセリングの時間を最大限に活用することが重要です。

疑問や不安はどんな些細なことでも遠慮なく質問し、医師の説明に納得できるまで話し合いましょう。

当院では、シミュレーションソフトや多くの症例写真を用いて、術後のイメージを具体的に共有するよう努めています。

また、メリットだけでなくデメリットやリスクについても包み隠さず説明し、十分な情報を得た上で意思決定できるようサポートします。

カウンセリング時の確認事項

確認項目質問例重要性
医師の経験・実績「先生の乳房挙上術の経験年数や症例数は?」技術力と信頼性の判断材料
具体的な術式と理由「なぜこの術式が私に適しているのですか?」納得感と理解度を高める
リスクと合併症「起こりうるリスクと、その場合の対処法は?」万が一の事態への備え
アフターケア体制「術後の検診や保証制度はありますか?」術後の安心感につながる

「聞きにくい」と感じることもあるかもしれませんが、あなたの身体に関わる大切なことです。遠慮は不要です。

アフターケアと長期的な視点

手術が終わればすべて完了、ではありません。美しいバストを長く維持するためには、適切なアフターケアと長期的な視点が大切です。

当院では、術後の定期的な検診はもちろんのこと、日常生活での注意点やセルフケアについても丁寧にアドバイスします。

また、将来的なバストの変化(再下垂や加齢による変化など)についても考慮し、必要に応じてメンテナンスや追加治療の相談にも応じます。

患者様と長期的な信頼関係を築き、バストに関する悩みをトータルでサポートすることを目指しています。

乳房挙上術・豊胸術のダウンタイムと術後の経過

手術を受けるにあたり、ダウンタイムや術後の経過は多くの方が気になる点でしょう。ここでは、一般的な経過と、その期間を安心して過ごすための注意点、そして万が一のリスクについて説明します。

手術後の一般的な経過と回復期間

手術直後から数日間は、腫れ、内出血、痛みなどが現れます。これらは時間とともに徐々に軽減していきます。

個人差はありますが、一般的な回復期間の目安は以下の通りです。

術後の回復期間の目安

期間主な状態・症状日常生活
術後~3日腫れ、痛み、内出血のピーク。ドレーン挿入の場合あり。安静が基本。軽い家事程度。
術後1週間大きな腫れや痛みが落ち着く。抜糸(術式による)。デスクワークなど負担の少ない仕事は可能。
術後1ヶ月腫れや内出血はほぼ消失。傷跡はまだ赤みあり。軽い運動が可能になることも。
術後3ヶ月~6ヶ月バストの形が安定。傷跡も徐々に目立たなくなる。ほぼ通常の生活。激しい運動も可能に。

バストの形が完全に仕上がり、傷跡が成熟するまでには半年から1年程度かかることもあります。焦らず、医師の指示に従って経過を見守ることが大切です。

ダウンタイム中の注意点と過ごし方

ダウンタイムをできるだけ快適に、そして順調に回復するためには、いくつかの注意点があります。

ダウンタイム中の主な注意点

  • 医師の指示通りの安静
  • 処方された薬の正しい服用
  • 喫煙・飲酒の制限
  • バストへの強い刺激を避ける
  • 適切な圧迫固定(専用下着など)

特に、喫煙は血行を悪化させ、傷の治りを遅らせる原因となるため術前からの禁煙が強く推奨されます。また、術後しばらくは、うつ伏せ寝やバストを圧迫するような服装は避けましょう。

シャワーや入浴のタイミングも医師の指示に従ってください。

起こりうるリスクと合併症

どのような手術にも、リスクや合併症の可能性はゼロではありません。乳房挙上術や豊胸術(併用含む)で起こりうる主なリスクには以下のようなものがあります。

主なリスクと合併症

リスク・合併症概要
出血・血腫術後に出血が続いたり、血液が溜まったりすること。
感染手術創から細菌が侵入し、炎症を起こすこと。
傷跡の問題肥厚性瘢痕やケロイド、色素沈着など。
感覚の変化乳頭や乳輪、皮膚の感覚が鈍くなったり、過敏になったりすること。
左右差完全に左右対称にすることは難しく、多少の差が残ることがある。
(豊胸併用時)被膜拘縮シリコンバッグ周囲にできる被膜が厚く硬くなること。
(豊胸併用時)バッグの破損・位置異常稀にシリコンバッグが破損したり、位置がずれたりすること。

これらのリスクを最小限に抑えるため、クリニックでは衛生管理や手術手技に細心の注意を払っています。万が一、異常を感じた場合は、すぐにクリニックに連絡することが重要です。

術後の検診とアフターフォローの重要性

手術後の経過を良好に保つためには、定期的な検診が欠かせません。医師がバストの状態や傷の治り具合を確認し、適切なアドバイスを行います。

また、検診は合併症の早期発見・早期対応にもつながります。クリニックによっては長期的な保証制度やアフターフォロー体制を整えているところもありますので、事前に確認しておくと安心です。

手術以外の垂れ乳対策とその限界

垂れ乳の悩みを抱える方の中には、「できれば手術は避けたい」と考える方もいるでしょう。ここでは、手術以外の対策方法と、それぞれの効果、そして限界について解説します。

補正下着やエクササイズの効果

補正下着は着用時にバストの形を整え、一時的にリフトアップしたように見せる効果があります。しかし、これはあくまで対症療法であり、下着を外せば元の状態に戻ってしまいます。根本的な下垂の改善にはつながりません。

エクササイズ(特に大胸筋を鍛えるトレーニング)はバストの土台となる筋肉を強化し、ある程度のハリを保つ助けにはなります。しかし、乳腺組織そのものや、伸びてしまったクーパー靭帯、たるんだ皮膚を引き上げる効果は限定的です。

軽度の下垂予防や現状維持には役立つ可能性がありますが、既に進行した下垂を大幅に改善することは難しいでしょう。

美容医療(非手術)によるアプローチ

近年では、メスを使わない垂れ乳対策として、レーザー治療、高周波(RF)治療、HIFU(ハイフ)といった照射系の治療や、糸リフト、注入療法(ヒアルロン酸など)も注目されています。

これらの治療は、皮膚の引き締めやコラーゲン生成を促すことで、軽度の下垂やハリの改善に効果を示す場合があります。

非手術的アプローチの比較

治療法期待できる効果限界・注意点
照射系治療 (レーザー, RF, HIFU)皮膚の引き締め、ハリ改善効果は限定的、複数回の治療が必要な場合が多い
糸リフト軽度のリフトアップ効果の持続期間に限り、中等度以上の下垂には不向き
注入療法 (ヒアルロン酸など)一時的なボリュームアップ、ハリ改善吸収されるため効果は一時的、リフトアップ効果は弱い

これらの非手術療法は、ダウンタイムが短い、あるいはほとんどないというメリットがありますが、効果の程度や持続期間には個人差があり、手術ほどの劇的な変化は期待しにくいのが現状です。

セルフケアで改善できる範囲

バランスの取れた食事、質の高い睡眠、適度な運動、保湿ケアといった日々のセルフケアは、肌の健康を保ち、老化の進行を緩やかにする上で重要です。

バストのハリを維持するためにも、これらの基本的なケアは有効と言えるでしょう。

しかし、これらによって下垂したバストが元に戻るわけではありません。セルフケアはあくまで「予防」や「現状維持のサポート」と捉え、過度な期待はしないことが大切です。

根本改善を目指すなら手術という選択

様々な対策方法がありますが、中等度以上の垂れ乳やより確実で長期的な効果を求める場合、やはり乳房挙上術や豊胸術を組み合わせた手術が最も効果的な選択肢となります。

手術は皮膚のたるみや乳腺組織の位置を物理的に修正するため、他の方法では得られない根本的な改善が期待できます。

もちろん手術にはリスクやダウンタイムが伴いますが、専門医との十分なカウンセリングを通じて、ご自身の状態や希望に合った方法を選択することが満足のいく結果につながります。

乳房挙上術・豊胸術の費用相場

垂れ乳改善の手術を検討する際、費用は重要な関心事の一つです。ここでは、乳房挙上術単独の場合、および豊胸術を併用する場合の一般的な費用相場や、費用に含まれる項目について解説します。

実際の費用はクリニックや手術内容によって大きく異なるため、あくまで目安として参考にしてください。

乳房挙上術の費用内訳と目安

乳房挙上術の費用は、主に手術の術式(切開範囲)によって変動します。

一般的に、切開範囲が広くなるほど手術の難易度や時間が上がり、費用も高くなる傾向があります。

乳房挙上術の費用相場(術式別)

術式費用相場(税込)備考
乳輪周囲切開法60万円~100万円程度軽度の下垂向け
垂直切開法80万円~150万円程度中等度の下垂向け
逆T字切開法100万円~200万円程度重度の下垂向け

これらの費用には、通常、手術料、麻酔料、術前検査料、術後の薬代、検診料などが含まれますが、クリニックによって内訳は異なります。カウンセリング時に総額と含まれる項目をしっかり確認しましょう。

豊胸術を併用する場合の費用

乳房挙上術と豊胸術を同時に行う場合、それぞれの費用が加算されます。豊胸術の種類(シリコンバッグか脂肪注入か)によっても費用は変わります。

シリコンバッグ豊胸を併用する場合、乳房挙上術の費用に加えて、一般的に50万円~100万円程度の追加費用がかかることが多いです。バッグの種類や品質によっても価格差があります。

脂肪注入豊胸を併用する場合、脂肪吸引の範囲や注入量によって費用が変動し、乳房挙上術の費用に加えて60万円~150万円程度の追加費用が目安となります。

したがって、乳房挙上術と豊胸術を併用する場合の総費用はおおよそ150万円~300万円以上になることもあります。

※あくまで一般的な相場であり、個々のケースで大きく異なります。

クリニックによって費用が異なる理由

手術費用がクリニックによって異なる主な理由としては、以下のような点が挙げられます。

費用差が生じる主な要因

  • 医師の技術力や経験値
  • 使用する医療機器や材料の質
  • 麻酔の種類や麻酔科医の関与
  • アフターケアや保証制度の手厚さ
  • クリニックの立地や設備

費用だけでクリニックを選ぶのではなく、医師の技術や実績、カウンセリングの質、アフターフォロー体制などを総合的に比較検討することが重要です。

保険適用の可否について

乳房挙上術や豊胸術は美容目的の手術とみなされるため、原則として健康保険の適用外となり、全額自己負担(自由診療)です。

乳がん術後の乳房再建など一部のケースでは保険適用となる場合もありますが、一般的な垂れ乳の改善手術は該当しません。

医療費控除についても美容目的の場合は対象外となることが一般的です。詳細は、税務署や専門家にご確認ください。

よくある質問

垂れ乳の手術に関して、患者様からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。ここに記載されていない疑問点については、カウンセリング時にお気軽にご質問ください。

授乳後に垂れた胸も改善できますか?

はい、改善できます。授乳後のバストの変化は多くの方が経験する悩みであり、乳房挙上術や豊胸術を組み合わせることで、ハリのある美しいバストラインを取り戻すことが期待できます。

授乳によって乳腺組織が萎縮し、皮膚が伸びてしまうことが主な原因ですが、これらの状態に合わせて適切な手術計画を立てます。

ただし、将来的にまだ授乳の予定がある場合は、手術のタイミングについて医師とよく相談することが大切です。

手術の傷跡はどの程度残りますか?

手術である以上、傷跡が全くなくなることはありません。しかし、乳房挙上術の傷跡は時間の経過とともに徐々に薄く、白っぽい線状になり、目立ちにくくなっていきます。

乳輪周囲切開法では乳輪の境目に、垂直切開法や逆T字切開法では下着で隠れる位置に傷跡ができます。傷の治り方や目立ちやすさには個人差があり、体質(ケロイド体質など)も影響します。

当院では、できるだけ傷跡が目立たないよう丁寧に縫合し、術後のケアについてもアドバイスしています。

再手術は可能ですか?

はい、状態によっては再手術も可能です。例えば、術後の仕上がりに微調整を希望する場合や、加齢などによって再度下垂が進行した場合などが考えられます。

ただし、再手術は初回の手術よりも難易度が上がることがあり、皮膚や組織の状態によっては制限が生じることもあります。

まずは医師に相談し、再手術の必要性やリスク、期待できる効果について十分に話し合うことが重要です。

手術後の痛みはどの程度ですか?

術後の痛みには個人差がありますが、通常、手術当日から数日間は痛みを感じることが多いです。痛み止めを処方しますので、それを服用することでコントロールできます。

多くの場合、1週間程度で強い痛みは落ち着き、日常生活に大きな支障はなくなります。豊胸術を併用した場合、特に大胸筋下にバッグを挿入した場合は、筋肉痛のような痛みが少し長引くことがあります。

痛みが長引く場合や、我慢できないほどの強い痛みが続く場合は速やかにクリニックにご連絡ください。

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