フェイスラインがない・もたつきの原因は?脂肪とたるみの違いと改善法

鏡を見たときに自分の横顔や正面の輪郭がぼやけていると感じ、フェイスラインのもたつきに悩む方は少なくありません。

フェイスラインがない状態は、単に体重が増加したことだけが理由ではなく、加齢による皮膚や筋肉のたるみ、骨格の後退、あるいはそれらが複合的に絡み合って発生します。

原因を正確に把握せずに誤ったケアを続けると、逆効果になることさえあります。

この記事では、あなたのフェイスラインが崩れている原因が「脂肪」なのか「たるみ」なのかを見極める具体的な方法と、それぞれの原因に合わせた医療的なアプローチについて詳しく解説します。

この記事を書いた人

百人町アルファクリニック 院長 荻野 和仁

荻野 和仁
百人町アルファクリニック 院長
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医学博士
2014年 日本形成外科学会 専門医取得
日本美容外科学会 会員

【略歴】
獨協医科大学医学部卒業後、岩手医科大学形成外科学講座入局。岩手医科大学大学院卒業博士号取得、2014年に日本形成外科学会専門医取得。大手美容クリニックの院長を経て2017年より百人町アルファクリニックの院長を務める。

百人町アルファクリニックでは、糸を使った切らないリフトアップから、切開部分が目立たないフェイスリフトまで患者様に適した方法をご提案していますが、若返り手術は決して急ぐ必要はありません。

一人ひとりの皮下組織や表情筋の状態に合わせた方法を探し「安全性」と「自然な仕上がり」を第一に心がけているため、画一的な手術をすぐにはいどうぞ、と勧めることはしていません。

毎回手術前の診断と計画立案に時間をかけすぎるため、とにかく安く、早くこの施術をして欲しいという方には適したクリニックではありません。それでも、リフトアップの施術を年間300件行っている実績から、患者様同士の口コミや他のドクターからのご紹介を通じ、全国から多くの患者様に当院を選んでいただいています。

このサイトでは、フェイスリフトやたるみに関する情報を詳しく掲載しています。どうか焦らず、十分に勉強した上で、ご自身に合ったクリニックをお選びください。もちろん、ご質問やご相談があれば、いつでもお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。

目次

フェイスラインが消失してもたつく主な原因とメカニズム

フェイスラインが崩れる現象は、顔の解剖学的な構造の変化が直接的に影響しており、主に過剰な皮下脂肪の蓄積、加齢に伴う皮膚やSMAS筋膜の支持力低下、そして下顎骨の形状や大きさという3つの要素が複雑に関係しています。

顔の輪郭は皮膚、脂肪、筋肉、骨という層状の構造によって形成されていますが、これらのバランスが崩れることで顎と首の境目が曖昧になり、いわゆる「二重顎」や「下膨れ」といった状態を引き起こします。

特に日本人は欧米人に比べて下顎が小さい傾向にあり、少しの脂肪増加やたるみでもフェイスラインへの影響が出やすいという特徴を持ちます。

これら3つの要因が複合的に絡み合い、シャープな輪郭を失わせる主な要因となっています。

皮下脂肪およびバッカルファットの過剰な蓄積

顔の脂肪には大きく分けて、皮膚のすぐ下にある「皮下脂肪」と、頬の深い層にある「バッカルファット」の2種類が存在します。

フェイスラインのもたつきを訴える多くのケースで、この皮下脂肪が顎下やフェイスライン周辺に過剰についていることが確認できます。

体重増加によって脂肪細胞が肥大化すると、重力の影響を受けて下方向へと下がり、鋭利であるべき顎のラインを覆い隠してしまいます。

また、バッカルファットは本来こめかみから頬にかけて存在するものですが、これも加齢や重力によって下垂し、口角の横やフェイスラインに乗っかるように移動してくることで、ブルドッグのような見た目を作り出します。

これらは物理的な体積として存在するため、皮膚を引き締めるだけでは解消が難しく、脂肪そのものを減らすアプローチが必要となります。

加齢による皮膚弾力の低下と表情筋の衰え

年齢を重ねると、真皮層に存在するコラーゲンやエラスチンといった弾性線維が減少・変性し、皮膚そのものがゴムの伸びきった風船のように緩んでしまいます。

さらに、皮膚や脂肪を支える土台である表情筋や、顔の組織をつなぎ止めている「リテイニングリガメント(支持靭帯)」も加齢とともに緩みます。

特に顔の深層にあるSMAS(スマス)筋膜の衰えは深刻な影響を及ぼします。SMAS筋膜が緩むと、その上にある脂肪や皮膚を支えきれなくなり、雪崩のように下方向へと組織が滑り落ちます。

これがフェイスラインに溜まることで、もたつきやマリオネットラインを形成します。

この場合、脂肪の量は変わっていなくても、位置が下がることで「太った」ように見えたり、フェイスラインがない状態を作り出します。

下顎の骨格的な特徴と姿勢の影響

生まれつき下顎の骨が小さい、あるいは下顎が後退している「小顎症」の傾向がある場合、皮膚や脂肪が引っ張られる面積が狭いため、少しの肉付きでも顎下に余剰分が溜まりやすくなります。

骨のフレームが小さいために、テントの布が余るように皮膚がたるんで見えるのです。

また、現代人に多いスマートフォンの長時間使用によるストレートネックや猫背も大きな要因です。

顔を下に向け続ける姿勢は、広頚筋という首の筋肉を縮こまらせ、フェイスラインを下方向へ引っ張り下げる力を強めてしまいます。

舌の筋肉(舌骨筋群)が衰えて舌位置が下がることでも、顎下の皮膚がたるみ、二重顎のようなもたつきを助長します。

これらは生活習慣と骨格が密接に関わっているため、単なるダイエットでは改善しないことが多い領域です。

原因別の特徴的な症状

原因の分類主な症状の特徴見た目の変化
脂肪タイプ指でしっかりと摘める厚みがある全体的に丸顔で、顎と首の境目がない
たるみタイプ皮膚が柔らかく伸びやすい口角横に膨らみがあり、寝るとスッキリする
骨格・筋肉タイプ顎が小さく後退している痩せているのに二重顎に見える

脂肪タイプとたるみタイプの見極め方と自己診断

自分のフェイスラインのもたつきが脂肪によるものなのか、皮膚や筋肉のたるみによるものなのかを正確に区別することは、適切な改善策を選ぶ上で極めて重要です。

多くの人が「顔が太った」と勘違いして過度なダイエットを行いますが、たるみが原因である場合は急激な体重減少がさらにたるみを悪化させるリスクさえあります。

脂肪とたるみはそれぞれ物理的な性質が異なるため、触感や重力による変化を観察することで、ある程度の自己診断が可能です。

また、これら二つは完全に独立しているわけではなく、脂肪の重みでたるみが進行する混合タイプも多く存在します。

物理的な触感や重力による変化を確認することで、自身のタイプを特定し、適切な対策を講じることが可能です。

ピンチテストによる皮下脂肪の厚み確認

最も簡単かつ直接的な確認方法は、フェイスラインや顎下の気になる部分を親指と人差指でつまんでみる「ピンチテスト」です。

このとき、つまんだ部分にしっかりとした厚みや弾力があり、中身が詰まっている感覚がある場合は、皮下脂肪が主な原因である可能性が高いです。

一方で、つまんだ感触が薄く、皮膚だけが伸びるような感覚や、簡単に皮が引っ張れる場合は、脂肪よりも皮膚のたるみが優位であると考えられます。

特に顎下をつまんだ際に2センチ以上の厚みを感じるなら、脂肪溶解注射や脂肪吸引といった「減らす治療」が良い適応となります。

逆に皮膚がペラペラとしている場合は、引き締めやリフトアップ治療を優先する必要があります。

仰向け状態と起立状態の比較チェック

重力の影響をどのように受けるかを確認することも有効な手段です。

まず、手鏡を持って仰向けに寝転がります。この状態で顔を確認したとき、起立時と比べてフェイスラインがスッキリし、もたつきが解消されているように見える場合は「たるみ」が主原因です。

仰向けになることで重力の影響が顔の背面(耳側)へとかかり、下垂していた組織が一時的に元の位置に戻るためです。

逆に、仰向けになっても顎下やフェイスラインの膨らみが変わらず残っている場合は、その膨らみの正体は「脂肪」であると判断できます。

脂肪は姿勢を変えても体積自体は変わらないため、仰向けでも存在感を主張します。

この変化の度合いを見ることで、脂肪除去と引き上げのどちらに比重を置くべきかが見えてきます。

年齢と肌質から見る傾向と混合タイプ

一般的に20代までのフェイスラインのもたつきは、皮膚の弾力が十分にあるため、脂肪の蓄積や骨格的要因が強い傾向にあります。

しかし、30代後半以降になると、脂肪の減少と皮膚のたるみが同時に進行する混合タイプが増加します。

肌にハリがなく、乾燥気味で小じわが目立つような肌質の方は、たるみやすいため注意が必要です。

また、過去に急激なダイエットとリバウンドを繰り返した経験がある方は、皮膚が伸び縮みを繰り返したことで弾力を失い、たるみによるもたつきが出やすくなっています。

自分が「脂肪だけ」「たるみだけ」と決めつけず、両方の要素がどの程度の割合で混在しているかを冷静に分析することが、遠回りをしないための秘訣です。

自己診断チェックリスト

  • 顎下を指でつまんだ時、2cm以上の厚みがある(脂肪の可能性大)
  • 仰向けになるとフェイスラインがシャープになる(たるみの可能性大)
  • 口元にマリオネットラインのような溝と膨らみがある(たるみの可能性大)
  • 体重の増減に関わらず、昔から顎がないと言われる(骨格の可能性大)
  • 下を向くと二重顎になるが、正面顔は痩せている(たるみ・姿勢の可能性大)

日常生活でフェイスラインを崩している悪習慣

フェイスラインの美しさは、クリニックでの治療だけでなく、日々の生活習慣の積み重ねによって大きく左右されます。

無意識に行っている姿勢や癖が、知らず知らずのうちに顔の筋肉バランスを崩し、リンパの流れを滞らせ、脂肪やたるみを定着させる原因を作っています。

特に現代のライフスタイルは、顔の輪郭を崩す要因に溢れています。

高い費用をかけて治療を受けても、これらの悪習慣が改善されなければ、再びフェイスラインはもたつき始めます。日常の無意識な癖を見直し、マイナスの要因を取り除くことが、フェイスライン改善の第一歩です。

スマートフォンの長時間使用と姿勢の崩れ

スマートフォンを見る際に無意識に顔を下に向け、首を前に突き出す姿勢をとっている時間が長いと、フェイスラインに壊滅的なダメージを与えます。

この姿勢は、首の前面にある広頚筋を短縮させ、頬やフェイスラインの皮膚を下方向へと常に引っ張り続ける力を生み出します。

さらに、首が前に出ることで舌骨の位置が下がり、舌を支える筋肉群が緩むため、顎下の皮膚がたるんで二重顎が形成されやすくなります。

猫背や巻き肩も同様に、顔の皮膚を胸側へと引っ張り下げる要因となります。

デスクワーク中や移動中に画面を見る際は、できるだけ目線の高さまでスマートフォンを持ち上げ、首の後ろを伸ばす意識を持つことが、フェイスラインを守るための第一歩です。

食いしばりや咀嚼癖による筋肉の偏り

ストレスや集中している時に奥歯を強く噛み締める「食いしばり(TCH)」や、寝ている間の歯ぎしりは、エラにある咬筋という筋肉を過剰に発達させます。

咬筋が肥大すると、顔の横幅が広がり、ベース型の輪郭になることでフェイスラインが四角く見え、シャープさが失われます。

また、片側の歯だけで物を噛む「片噛み」の癖も、顔の筋肉バランスを左右非対称にし、使われていない側の筋肉が衰えてたるみを引き起こす原因となります。

さらに、柔らかいものばかりを好んで食べ、あまり噛まない食事スタイルは、口輪筋などの表情筋を弱らせ、顔全体の下垂を招きます。

適度な硬さのものを左右均等に噛み、リラックス時は上下の歯を離す意識を持つことが重要です。

塩分過多とアルコール摂取による慢性的なむくみ

フェイスラインが日によって違う、夕方になるともたつくという場合、その大きな要因は「むくみ」にあります。

塩分の多い食事やアルコールの過剰摂取は、体内の水分バランスを崩し、細胞間に余分な水分を溜め込ませます。

顔、特にフェイスライン周辺はリンパの流れが滞りやすい場所であり、むくみによって重力の影響をより強く受けることになります。

その結果、皮膚が常に引き伸ばされた状態となり、やがて皮膚の伸び(たるみ)として定着してしまいます。

水分をしっかりと摂って排出を促すとともに、塩分を控えた食事を心がけ、睡眠を十分に取ることで、むくみによるフェイスラインのぼやけを防ぐことができます。

医療の力で脂肪を撃退する治療アプローチ

皮下脂肪が原因でフェイスラインがない場合、セルフケアやダイエットだけで顔の局所的な脂肪を落とすことは非常に困難です。

医療機関における脂肪除去のアプローチは、脂肪細胞そのものを物理的に減らすため、リバウンドのリスクが低く、確実な変化を得られる方法です。

脂肪へのアプローチには、ダウンタイムがほとんどない薬剤による治療から、一度の手術で劇的な変化を出す吸引手術、さらには熱エネルギーを用いて脂肪を溶解する機器治療まで、多様な選択肢が存在します。

脂肪の量やライフスタイルに合わせて適切な除去法を選ぶことで、確実な変化を得られます。

脂肪溶解注射による段階的なサイズダウン

脂肪溶解注射は、デオキシコール酸などを主成分とする薬剤を気になる脂肪層に直接注入し、脂肪細胞膜を破壊して排出させる治療法です。

カベリンやBNLSなどが代表的です。メスを使わず、注射針だけで施術が完了するため、腫れや内出血といったダウンタイムが非常に軽く、周囲にバレずに自然にフェイスラインをスッキリさせたい方に適しています。

一度で全ての脂肪がなくなるわけではなく、3回から5回程度繰り返すことで徐々に効果を実感できるのが特徴です。

顎下や口横のポニョっとした小さな脂肪の膨らみに対して、ピンポイントで調整をかけたい場合に非常に有効な手段です。

顔の脂肪吸引による確実なボリューム減少

フェイスラインのもたつきの原因が大量の皮下脂肪である場合、最も確実かつ大きな変化を期待できるのが脂肪吸引です。

耳の裏や顎の下などの目立たない箇所を数ミリ切開し、そこからカニューレ(細い管)を挿入して直接脂肪を吸引除去します。

物理的に脂肪細胞の数を減らすため、将来的なリバウンドの可能性は極めて低く、一度の施術でシャープな輪郭を形成できます。

また、脂肪がなくなることで皮膚が癒着し、引き締め効果も期待できます。

ただし、術後は筋肉痛のような痛みや内出血、拘縮(硬くなる現象)などのダウンタイムがあり、完成までには数ヶ月を要します。

ジョールファットや顎下の厚みを根本から解決したい場合に選ばれます。

脂肪破壊・溶解を目的とした医療機器治療

手術や注射に抵抗がある場合、ハイフ(HIFU)のリニアモードや、高周波(RF)を用いた機器による治療が選択肢となります。

これらは熱エネルギーを脂肪層に照射することで、脂肪細胞を破壊・溶解し、代謝によって体外へ排出させる仕組みです。

特にリニアハイフは、広範囲に熱を加えることで脂肪溶解に特化した効果を発揮し、二重顎の改善やフェイスラインの引き締めに効果的です。

皮膚を切開することなく、ダウンタイムもほぼゼロで受けられる手軽さが魅力ですが、脂肪吸引に比べると変化はマイルドであり、複数回の施術が必要となることが一般的です。

脂肪治療の比較一覧

治療法効果の即効性と確実性ダウンタイムの程度
脂肪溶解注射緩やか(複数回必要)ほぼ無し〜数日の腫れ
顔の脂肪吸引高い(1回で完了)内出血・拘縮あり(数週間)
医療機器(HIFU等)中程度(直後〜数ヶ月)ほぼ無し(赤み程度)

たるみを引き上げフェイスラインを作る治療法

脂肪の重みではなく、皮膚や筋膜の緩みが原因でフェイスラインが崩れている場合、組織を元の位置に戻す「リフトアップ」治療が必要となります。

たるみ治療は、切開を伴う外科手術から、糸を使用するもの、照射系治療まで幅広く進化しています。

たるみの程度が軽度であれば機器治療で十分な場合もありますが、皮膚の余剰が大きい場合や深い層からの下垂がある場合は、物理的な引き上げ力が強い治療を選択する必要があります。

たるみの進行度合いに応じた適切なリフトアップ治療を選ぶことで、重力に負けない輪郭を取り戻せます。

糸リフトによる物理的な引き上げ

糸リフト(スレッドリフト)は、コグ(棘)のついた特殊な医療用の糸を皮下に挿入し、組織を物理的に引っ掛けて持ち上げる治療法です。

垂れ下がった脂肪や皮膚を元の位置に戻すことで、即効性のあるリフトアップ効果が得られます。

使用される糸は時間とともに体内に吸収される素材が主流で、吸収される過程でコラーゲンの生成を促し、肌のハリ感も向上させます。

切開リフトに比べてダウンタイムが短く、傷跡も針穴程度で済むため、週末を利用して受けられる手軽さが人気です。

効果の持続期間は糸の種類によりますが、1年から2年程度が目安となり、定期的なメンテナンスを行うことで良い状態を維持できます。

切開リフトによる根本的なたるみ除去

重度のたるみや、皮膚の余りが顕著でフェイスラインが完全になくなっている場合、余分な皮膚を切り取り、深層のSMAS筋膜から引き上げる「切開リフト(フェイスリフト)」が最も効果的です。

耳の周りを切開し、皮膚とその下の筋膜を剥離して引き上げ、余った皮膚を切除して縫合します。

根本的な構造の修正を行うため、他のどの治療よりも強力なリフトアップ効果と長い持続期間(5年から10年以上)を誇ります。

傷跡は耳のラインに沿って目立たなくなりますが、術後の腫れや内出血といったダウンタイムは長く、費用も高額になる傾向があります。

50代以降で大きな変化を望む方に適した方法です。

照射系治療によるタイトニング

皮膚の深層に熱を与えてコラーゲンを収縮・増生させ、肌を引き締める治療法には、ハイフ(HIFU)やサーマクール(高周波)があります。

ハイフは筋膜層(SMAS)まで熱を届けて土台から引き締めるのに対し、サーマクールは真皮層から脂肪層にかけての広範囲を引き締め、ボリュームダウンさせる効果に優れています。

これらは「切らないリフトアップ」と呼ばれ、手術のような劇的な引き上げ効果はありませんが、定期的に受けることでたるみの進行を予防し、現状を維持・改善する効果があります。

フェイスラインのもたつきが気になり始めた初期段階や、手術後のメンテナンスとして非常に有用です。

たるみ治療の強度比較

治療法引き上げ強度持続期間の目安
糸リフト中〜強1年〜2年
切開リフト最強5年〜10年以上
照射系(HIFU等)弱〜中(引き締め)半年〜1年

骨格要因と複合タイプへの総合的アプローチ

フェイスラインの悩みは、脂肪やたるみだけでなく、骨格が原因である場合も少なくありません。特に日本人は顎が小さく後退しているケースが多く、これによって皮膚が余り、フェイスラインが不明瞭になりがちです。

また、多くの患者様は「脂肪」と「たるみ」と「骨格」の要因が混ざり合っています。

このような複合的な原因に対しては、単一の治療ではなく、複数を組み合わせたコンビネーション治療を行うことで、理想的なEライン(鼻先と顎先を結んだ線)とシャープな輪郭を形成することができます。

骨格や複数の原因が絡む場合でも、適切な複合治療を行うことで、理想的なEラインとシャープな輪郭形成が可能です。

ヒアルロン酸注入による顎形成

下顎が小さい、あるいは後退しているためにフェイスラインが出ない場合、顎先に硬めのヒアルロン酸を注入して顎を前に出す・尖らせる治療が非常に効果的です。

顎に高さと長さが出ることで、首との境目がはっきりし、前から見た時にV字のシャープなラインが生まれます。

また、顎が出ることで顎下の皮膚が前方に引っ張られるため、二重顎のたるみが改善されるという副次的な効果も期待できます。

数分で終わる処置でありながら、輪郭全体のバランスを劇的に整えることができるため、「フェイスラインがない」と悩む方にとって満足度の高い治療法です。

脂肪除去とスレッドリフトの併用

脂肪が多く、かつ重みでたるんでいるタイプの場合、脂肪吸引や脂肪溶解注射で「重り」を取り除くと同時に、糸リフトで皮膚を「引き上げる」治療を組み合わせることが一般的です。

脂肪を減らすだけでは、中身が減った分だけ皮膚が余り、逆にたるんで見えるリスクがあるためです。

脂肪除去と同日に糸リフトを行うことで、脂肪がなくなったスペースを癒着させながら引き上げることができ、より強力かつ滑らかなフェイスラインを形成できます。

この「引き算(脂肪除去)」と「足し算(リフトアップ)」の組み合わせは、現代の輪郭形成において標準的なアプローチとなっています。

エラボトックスによる筋肉調整

食いしばりによって咬筋が発達し、フェイスラインが四角く外側に張り出している場合は、ボトックス注射が有効です。

筋肉の動きを弱めて萎縮させることで、エラの張りを解消し、正面から見た時のフェイスラインをすっきりとさせます。

ただし、エラが小さくなることで皮膚が余り、かえって口元のたるみが目立つようになるケースもあるため、皮膚の弾力が低下している年代の方には、ハイフや糸リフトとの併用を提案することがあります。

全体のバランスを見ながら、どの組織を減らし、どこを引き上げるかをデザインする診断力が求められます。

自分に適した治療法を選ぶための判断基準

フェイスラインを改善するための治療法は多岐にわたり、それぞれにメリットとデメリットが存在します。

最良の結果を得るためには、単に「効果が高いから」という理由だけでなく、ご自身のライフスタイル、予算、痛みの許容度、そして将来的な計画までを含めて検討することが重要です。

美容医療は魔法ではないため、ダウンタイムやリスクを正しく理解した上で選択しなければ、術後に後悔することにもなりかねません。

ダウンタイムや予算、将来的な計画を総合的に判断し、後悔のない治療選択を行いましょう。

ダウンタイムと社会的スケジュールの調整

治療を選ぶ際、最も現実的な制約となるのがダウンタイム(回復期間)です。仕事や学校をどの程度休めるかによって、選択肢は大きく変わります。

例えば、切開リフトや脂肪吸引は劇的な効果が見込めますが、1週間から2週間程度の腫れや内出血、圧迫固定(フェイスバンド)の着用期間が必要です。

長期休暇が取れない方や、家族や同僚に絶対にバレたくないという方には、直後からメイクが可能で腫れが少ない糸リフトやハイフ、注入治療の方が適しています。

自分のスケジュールと照らし合わせ、無理のない範囲で受けられる治療を選ぶことが大切です。

予算と効果の持続性のバランス

美容医療の費用は、数万円で済むものから100万円を超えるものまで幅広いです。

重要なのは、1回あたりの金額だけでなく、効果の持続期間を含めたコストパフォーマンスを考えることです。

例えば、ヒアルロン酸やボトックスは初期費用が安いですが、半年から1年ごとにメンテナンスが必要となり、長期的にはコストがかさむ場合があります。

一方、脂肪吸引や切開リフトは初期費用が高額ですが、効果は半永久的または長期にわたるため、トータルで見れば経済的であるという考え方もできます。

ご自身が「今すぐ安く改善したい」のか、「将来を見据えて根本的に治したいのか」を明確にすることが重要です。

専門医による正確な診断の重要性

最終的にどの治療が適しているかを判断するのは、自己診断だけでなく、経験豊富な医師の診断が必要です。

自分では「脂肪が多い」と思っていても、実際は「たるみ」が主原因であったり、その逆のケースも多々あります。誤った自己判断で合わない治療を選んでしまうと、効果が出ないばかりか、頬がこけたり老けて見えるなどのトラブルに繋がります。

カウンセリングでは、複数のクリニックを回り、医師が皮膚の厚み、骨格、筋肉の動きを実際に触診して診断してくれるかを確認してください。

リスクやデメリットまで隠さずに説明し、あなたの希望に寄り添った提案をしてくれる医師を選ぶことが成功への鍵です。

フェイスラインがない・もたつきに関するよくある質問

ダイエットをして体重を落とせばフェイスラインは復活しますか?

皮下脂肪が主な原因である場合、体重減少によってある程度の改善は見込めます。しかし、急激なダイエットは脂肪の中身だけが減り、皮膚が収縮しきれずに余ってたるんでしまうリスクがあります。

また、加齢によるたるみや骨格が原因の場合は、痩せてもフェイスラインのもたつきが解消されない、あるいは余計に目立つことがあります。適度な運動と食事制限に加え、肌の引き締めケアを同時に行うことが大切です。

エラボトックスを打つとたるむと聞いたのですが本当ですか?

咬筋が非常に発達している方がボトックスで急激に筋肉を小さくすると、中身のボリュームが減った分、皮膚が余ってたるみが生じることがあります。

特に皮膚の弾力が低下している30代後半以降の方に起こりやすい現象です。

これを防ぐためには、注入量を調整したり、糸リフトやハイフなどの引き締め治療を併用することで、フェイスラインを美しく保つことが可能です。経験豊富な医師による診断が重要です。

脂肪吸引後の圧迫バンドはいつまで必要ですか?

一般的に、施術直後から24時間は外さずに着用し、その後も術後3日から1週間程度は、可能な限り長時間(就寝時や在宅時など)の着用が推奨されます。

圧迫をしっかり行うことで、空洞になった皮下組織を癒着させ、内出血やむくみを最小限に抑え、綺麗な仕上がりを作ることができます。

クリニックによって推奨期間が異なるため、担当医の指示に従ってください。

男性でもフェイスラインの治療を受ける人はいますか?

はい、近年では男性の患者様も非常に増えています。男性の場合、シャープなフェイスラインは「仕事ができる」「若々しい」という印象を与えるため、ビジネスシーンでのメリットを考えて施術を受ける方が多いです。

男性は女性に比べて皮膚が厚く硬い傾向があるため、脂肪吸引などが非常に効果的です。メイクで隠せない分、ダウンタイムの少ない治療が好まれる傾向にあります。

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