ほうれい線はエラスチン不足が原因?増やすための5つの方法(化粧品・サプリ・食事)

ふと鏡を見たときに、以前より深く刻まれたほうれい線に気づき、心を痛めていませんか。そのお悩みの根本には、「エラスチン」という肌の弾力を支える成分の不足が隠れているかもしれません。

エラスチンは肌のハリを保つための重要なバネのような役割を担っていますが、年齢とともに減少し、紫外線などのダメージで変性してしまいます。

この重要な成分が失われると、肌は弾力を失い、頬がたるむことでほうれい線が目立ってくるのです。

この記事では、ほうれい線とエラスチンの深い関係や、日々の生活でエラスチンを補い、育むための具体的な5つの方法を化粧品、サプリメント、食事の観点から詳しく解説します。

この記事を書いた人

百人町アルファクリニック 院長 荻野 和仁

荻野 和仁
百人町アルファクリニック 院長
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医学博士
2014年 日本形成外科学会 専門医取得
日本美容外科学会 会員

【略歴】
獨協医科大学医学部卒業後、岩手医科大学形成外科学講座入局。岩手医科大学大学院卒業博士号取得、2014年に日本形成外科学会専門医取得。大手美容クリニックの院長を経て2017年より百人町アルファクリニックの院長を務める。

百人町アルファクリニックでは、糸を使った切らないリフトアップから、切開部分が目立たないフェイスリフトまで患者様に適した方法をご提案していますが、若返り手術は決して急ぐ必要はありません。

一人ひとりの皮下組織や表情筋の状態に合わせた方法を探し「安全性」と「自然な仕上がり」を第一に心がけているため、画一的な手術をすぐにはいどうぞ、と勧めることはしていません。

毎回手術前の診断と計画立案に時間をかけすぎるため、とにかく安く、早くこの施術をして欲しいという方には適したクリニックではありません。それでも、リフトアップの施術を年間300件行っている実績から、患者様同士の口コミや他のドクターからのご紹介を通じ、全国から多くの患者様に当院を選んでいただいています。

このサイトでは、フェイスリフトやたるみに関する情報を詳しく掲載しています。どうか焦らず、十分に勉強した上で、ご自身に合ったクリニックをお選びください。もちろん、ご質問やご相談があれば、いつでもお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。

目次

ほうれい線の正体とエラスチンの深い関係

ほうれい線は、肌の弾力をつかさどるエラスチンの減少が主な原因の一つです。

エラスチンが失われると肌のハリを支える力が弱まり、重力に負けた頬のたるみによって深い溝が刻まれてしまいます。

ほうれい線は「シワ」ではなく「たるみ」

多くの方がほうれい線を「シワ」の一種だと考えていますが、医学的には皮膚のたるみによって生じる「溝」や「境界線」と捉えます。

皮膚は表面から表皮、真皮、皮下組織という構造になっています。

ほうれい線は、真皮層の構造が弱まり、皮下組織の脂肪を支えきれなくなることで頬が下がり、口元の皮膚との境界が深くなることで現れます。

表情の変化によって一時的にできるシワとは異なり、無表情のときでもはっきりと線が見えるのが特徴です。

肌の弾力を司るエラスチンの役割

真皮層には、肌のハリや弾力を維持するための重要な成分が存在します。その中心的な役割を担うのがエラスチンです。

エラスチンはゴムのように伸縮する性質を持つ線維状のタンパク質で、真皮全体の約2~5%を占めています。肌が押されたり引っ張られたりしたときに、元の形に戻ろうとする復元力は、このエラスチンの働きによるものです。

この働きが、肌にしなやかな弾力をもたらしているのです。

コラーゲンとエラスチンの違いとは?

エラスチンとよく比較される成分にコラーゲンがあります。どちらも真皮層に存在するタンパク質ですが、その役割は異なります。

コラーゲンは真皮の約70%を占め、肌の構造を支える丈夫な柱のような役割を果たします。

一方、エラスチンはそのコラーゲン線維を束ね、つなぎとめることで、構造全体に弾力を与えるバネのような役割を担っています。

肌の構造における役割分担

成分役割特徴
コラーゲン肌の構造を支える(柱)丈夫で硬い、量が多い
エラスチン肌に弾力を与える(バネ)伸縮性に富む、量が少ない
ヒアルロン酸水分を保持する(水分)ゼリー状で隙間を埋める

コラーゲンが十分にあっても、それを束ねるエラスチンが減少・変性すると、肌の弾力は失われ、たるみにつながります。

なぜエラスチンは年齢とともに減ってしまうのか

エラスチンは体内で新たに作られる量が非常に少なく、そのピークは20代後半までと言われています。40代を過ぎると急激に減少し始め、その後はほとんど再生されないと考えられています。

加齢によってエラスチンを生成する線維芽細胞の働きが衰えることが主な原因です。

そのため、一度失われたエラスチンを自力で回復させることは非常に難しく、年齢とともに肌の弾力が低下していくのです。

エラスチンを減らす日常生活の落とし穴

日常生活の中には、自分でも気づかないうちにエラスチンを減少させてしまう習慣が潜んでいます。

特に、紫外線によるダメージ、食事による「糖化」、そして体をサビさせる「酸化」は、エラスチンにとって三大悪影響と言えます。

最大の敵「紫外線」による光老化

肌の老化の約80%は、紫外線が原因で起こる「光老化」によるものだと言われています。紫外線の中でも特に波長の長いUVA(紫外線A波)は、肌の奥深く、真皮層にまで到達します。

UVAはエラスチンやコラーゲンを生成する線維芽細胞にダメージを与えるだけでなく、エラスチンそのものを分解する酵素(エラスターゼ)の働きを活発にしてしまいます。

その結果、エラスチンはもろくなり、弾力を失ってしまうのです。

日々の紫外線対策を怠ることは、自らエラスチンを破壊していることと同じです。

甘いものが引き起こす「糖化」の恐怖

糖化とは、食事などから摂取した過剰な糖分が、体内のタンパク質と結びついて変性し、AGEs(終末糖化産物)という老化物質を生成する反応のことです。

エラスチンもタンパク質の一種であるため、糖化の影響を直接受けます。糖化したエラスチンは本来のしなやかな弾力を失い、硬くもろくなってしまいます。

パンや白米、お菓子、ジュースなど、血糖値を急激に上げる食品の摂りすぎは、肌の糖化を促進し、ほうれい線を深くする原因となります。

糖化を進めやすい食品と対策

糖化を進めやすい食品対策・代替案
清涼飲料水、菓子パン水、お茶、全粒粉パン
白米、うどん、パスタ玄米、そば、全粒粉パスタ
揚げ物、加工食品蒸し料理、茹で料理、新鮮な食材

体をサビさせる「酸化」の影響

酸化とは、呼吸によって取り込んだ酸素の一部が、体内でエネルギーに変わる際に「活性酸素」となり、細胞を傷つけてしまう現象です。いわば体がサビつくようなものです。

ストレス、喫煙、過度な運動なども活性酸素を増やす原因となります。

この活性酸素は、エラスチンを作り出す線維芽細胞を攻撃し、その働きを低下させます。また、エラスチン自体も酸化によってダメージを受け、変性してしまいます。

酸化と糖化は互いに影響し合い老化を加速させるため、両方への対策が重要です。

無意識の癖や姿勢がたるみを加速させる

頬杖をつく、片側だけで食べ物を噛む、猫背でスマートフォンを長時間見るなどの無意識の癖や姿勢も、顔のたるみに影響を与えます。

特定の方向にばかり力が加わったり、血行が悪くなったりすることで顔の筋肉のバランスが崩れ、皮膚を支える力が弱まります。

この状態が続くと、エラスチンが正常に機能していても物理的な負担によってたるみが進行し、ほうれい線が定着しやすくなります。

化粧品でエラスチンは増やせる?正しい選び方と使い方

化粧品だけでエラスチンそのものを大幅に増やすことは難しいですが、エラスチンをサポートする成分を補い、肌環境を整えることは可能です。

正しい成分知識を持ち、適切な製品を選ぶことが鍵となります。

エラスチン生成をサポートする注目成分

スキンケアでエラスチンにアプローチする場合、エラスチンそのものを補うというよりは、エラスチンを作り出す線維芽細胞の働きをサポートしたり、エラスチン分解酵素の働きを抑制したりする成分を選ぶことが現実的です。

  • レチノール
  • ナイアシンアミド
  • ビタミンC誘導体
  • ペプチド類

これらの成分は、線維芽細胞の活性化やコラーゲン・エラスチンの生成促進、抗酸化作用などが報告されており、ハリや弾力のある肌を目指す上で有効な選択肢となります。

成分表示でチェックすべきポイント

化粧品を選ぶ際は、パッケージのイメージだけでなく、必ず裏面の成分表示を確認する習慣をつけましょう。

成分表示は配合量の多い順に記載されています。先に挙げたような有効成分が、なるべく上位に記載されている製品を選ぶのが一つの目安です。

ハリ・弾力ケア化粧品の成分チェックリスト

チェック項目確認内容期待できる働き
有効成分の順序成分表示の上位に記載されているか主成分としてしっかり配合されている
成分の種類レチノール、ナイアシンアミドなど目的の成分があるか線維芽細胞の活性化など
保湿成分の有無セラミド、ヒアルロン酸などが含まれているか肌の乾燥を防ぎ、バリア機能を高める

浸透力を高めるスキンケアのコツ

せっかく良い成分が配合された化粧品を使っても、肌への浸透力が低ければ効果は半減してしまいます。まずは洗顔で汚れや古い角質をしっかり落とし、肌を清潔な状態に整えることが基本です。

化粧水で十分に水分を与えた後、美容液やクリームを塗布します。

塗る際は、肌を強くこすらず、手のひらで顔全体を包み込むように優しくハンドプレスすると、体温で温められて成分の浸透を助けます。

化粧品選びで注意したいこと

「エラスチン配合」と謳っている化粧品もありますが、注意が必要です。エラスチンは分子量が非常に大きいため、化粧品として肌の表面に塗っても、真皮層まで浸透して直接補充されることはありません。

肌表面の保湿や一時的なハリ感を出す効果は期待できますが、根本的なエラスチン増加にはつながらないことを理解しておきましょう。

製品選びでは、イメージだけでなく、どのような成分でアプローチするのかを正しく見極めることが大切です。

サプリメントで内側からエラスチンを補う

エラスチンは、サプリメントを利用して内側から直接補うアプローチが可能です。

食事だけでは十分に摂取することが難しいエラスチンペプチドなどを効率的に取り入れることで、体の中からハリや弾力のある肌作りをサポートすることが期待できます。

エラスチンサプリメントの種類と特徴

市場には様々なエラスチンサプリメントがありますが、主な原料によって特徴が異なります。代表的なのは魚由来と豚由来のエラスチンです。

原料別エラスチンサプリメントの特徴

原料特徴選び方のポイント
魚由来エラスチンカツオなどから抽出。人間に近い構造を持つ。品質管理がしっかりした製品を選ぶ。
豚由来エラスチン豚の血管や靭帯から抽出。比較的安価な製品が多い。特有の匂いが少ない製品が続けやすい。

どちらを選ぶかは個人の好みや体質にもよりますが、重要なのは「エラスチンペプチド」の形で配合されているかです。

ペプチドとは、タンパク質が分解されてアミノ酸がいくつか結合した状態のことで、分子量が小さく、体内で吸収されやすいという利点があります。

効果的な摂取タイミングと量

エラスチンサプリメントの摂取タイミングに厳密な決まりはありませんが、一般的には就寝前に摂取するのが良いとされています。

これは、睡眠中に肌のターンオーバーが活発になるため、その時間に合わせて栄養素を補給することで、効率的に利用されやすくなるためです。

製品によって推奨される摂取量は異なりますので、必ずパッケージに記載された目安量を守るようにしてください。一度に大量に摂取しても、効果が高まるわけではありません。

毎日継続して摂取することが何よりも重要です。

一緒に摂りたい相性の良い栄養素

エラスチンサプリメントの効果をさらに高めるためには、他の栄養素との組み合わせも意識すると良いでしょう。

  • ビタミンC
  • 鉄分
  • 亜鉛
  • コラーゲンペプチド

ビタミンCや鉄、亜鉛は、体内でコラーゲンやエラスチンが合成される際に補助的な役割を果たす栄養素です。また、コラーゲンペプチドを一緒に摂取することで、肌のハリと弾力の両方にアプローチできます。

このような成分が一緒に配合された複合タイプのサプリメントを選ぶのも一つの方法です。

サプリメント選びの際の注意点

サプリメントはあくまで栄養補助食品であり、医薬品ではありません。即効性を期待するのではなく、長期的な視点で継続することが大切です。

また、アレルギー体質の方や持病があり薬を服用している方は、事前にかかりつけの医師や薬剤師に相談することをおすすめします。

品質や安全性が信頼できるメーカーの製品を選ぶことも、安心して続けるための重要なポイントです。

食事でエラスチンを育む食生活のヒント

エラスチンを体内で増やすためには、その材料となる栄養素を日々の食事からバランス良く摂取することが大切です。

特定の食材を意識的に取り入れることで体の内側からエラスチン生成をサポートし、しなやかな肌を育むことができます。

エラスチンの材料となるアミノ酸を多く含む食品

エラスチンは、デスモシンやイソデスモシンという特殊なアミノ酸によってその特徴的な弾力性が生み出されています。

これらのアミノ酸の元となるのは、グリシン、プロリン、アラニン、バリンといった一般的なアミノ酸です。バランス良く含む良質なタンパク質を摂取することが、エラスチン合成の第一歩となります。

良質なタンパク質を多く含む食品

食品カテゴリ具体的な食材例
肉類鶏むね肉、ささみ、牛すじ、豚赤身肉
魚介類カツオ、マグロ、サケ、アジ、エビ
その他卵、大豆製品(豆腐、納豆)、乳製品

エラスチン生成を助けるビタミンとミネラル

タンパク質を摂取するだけでは、効率的にエラスチンは作られません。その合成を助けるビタミンやミネラルの存在が必要です。

特にビタミンC、銅、亜鉛は、エラスチンの線維を強化し、正常な構造を保つために重要な役割を果たします。

エラスチン合成をサポートする栄養素と食品

栄養素主な働き多く含む食品
ビタミンCコラーゲン・エラスチンの合成補助ピーマン、ブロッコリー、キウイ
エラスチン線維の結合を助けるレバー、カシューナッツ、干しエビ
亜鉛新陳代謝を促進し、タンパク質合成を助ける牡蠣、牛肉、チーズ

抗酸化作用でエラスチンを守る食事

体内で発生する活性酸素は、エラスチンを破壊する原因の一つです。エラスチンを守るためには、抗酸化作用のある栄養素を積極的に食事に取り入れることが有効です。

ビタミンA(β-カロテン)、ビタミンE、ポリフェノールなどが代表的な抗酸化物質です。

  • ビタミンA(β-カロテン)を多く含む食品 緑黄色野菜(人参、かぼちゃ、ほうれん草など)
  • ビタミンEを多く含む食品 ナッツ類、アボカド、植物油など
  • ポリフェノールを多く含む食品 ブルーベリー、緑茶、カカオなど

これらの食品を日々の食事に彩りとして加えることで、エラスチンを酸化のダメージから守ることができます。

避けたいエラスチンを壊す食習慣

エラスチンを育む食事を心がける一方で、エラスチンに悪影響を与える食習慣を避けることも同じくらい重要です。前述した「糖化」を引き起こす、血糖値を急激に上げる食品(精製された炭水化物や甘いもの)の過剰摂取は控えましょう。

また、食品添加物やトランス脂肪酸を多く含む加工食品やインスタント食品も、体内の炎症を引き起こし、間接的にエラスチンにダメージを与える可能性があるため、できるだけ避けるのが賢明です。

ほうれい線の深さでわかる?あなたのエラスチン危険度チェック

ほうれい線の状態をご自身でチェックすることで、肌内部のエラスチンがどの程度減少しているか、ある程度の目安を知ることができます。

毎日見ている顔だからこそ、客観的に状態を把握し、今の自分に必要なケアを見極めましょう。

鏡の前で簡単セルフチェック方法

まず、正面から顔全体が映る鏡を用意します。部屋の照明を明るくし、真顔の状態でほうれい線がどのように見えているかを確認します。

次に、少し上を向いた状態でほうれい線がどう変化するか、さらに軽く指で頬を持ち上げたときに線が消えるかどうかもチェックしてみましょう。

これらの変化から、たるみの進行度を推測できます。

【レベル1】うっすら線が見える「初期段階」

この段階では、笑った時などに口元に線が入り、真顔に戻ってもうっすらと跡が残る状態です。まだ肌の弾力は比較的保たれており、エラスチンの減少は始まったばかりと考えられます。

上を向いたり頬を軽く持ち上げたりすると、ほとんど線は見えなくなります。

この段階であれば、紫外線対策の徹底、保湿ケア、そしてエラスチンをサポートする食生活やサプリメントの導入といったセルフケアで進行を十分に遅らせることが可能です。

【レベル2】無表情でも線がわかる「進行段階」

真顔の状態でも、ほうれい線がはっきりと認識できる段階です。エラスチンの減少が進み、肌の弾力が低下して、頬の軽いたるみが始まっています。

上を向くと線は薄くなりますが、完全には消えません。

この段階では、セルフケアの強化が重要です。エラスチン生成をサポートする成分が配合された美容液などを取り入れ、内側からのケアも積極的に行いましょう。

同時にこれ以上の進行を防ぐため、美容クリニックでの予防的な治療を検討し始めるのも良いタイミングです。

【レベル3】くっきり深く刻まれた「重度段階」と美容医療の選択肢

無表情でもほうれい線が深く、くっきりと溝のように刻まれている状態です。エラスチンが大幅に減少し、コラーゲン構造も弱まっているため、真皮層の支えが失われ頬全体がたるんでいます。

上を向いても頬を持ち上げても線が消えず、皮膚に折り目が定着してしまっています。

この段階になると、残念ながら化粧品や食事といったセルフケアだけで改善を目指すのは非常に困難です。

根本的な改善を望むのであれば、美容医療による専門的な治療が必要となります。

ケア方法によるアプローチの違い

ケア方法アプローチ期待できる効果
セルフケア予防・進行抑制現状維持、将来のたるみ予防
美容医療(フェイスリフト等)根本的な改善たるみの解消、長期的な若返り効果

ご自身の段階を正しく認識し、適切なケアを選択することが、満足のいく結果への近道です。

セルフケアの限界と美容クリニックでの根本治療

セルフケアはほうれい線の予防や進行を遅らせる上でとても大切ですが、すでに深く刻まれてしまったほうれい線を完全に消すことは困難です。

美容クリニックでは、エラスチン減少の根本原因にアプローチし、見た目を大きく改善する治療が可能です。

なぜセルフケアだけでは限界があるのか

化粧品やサプリメント、食事によるケアは、主に「これ以上悪化させないための予防」や「肌環境を整えて緩やかに改善を目指す」アプローチです。

エラスチンが大幅に失われ、皮膚が伸びてたるんでしまった状態を、これらのケアだけで元の位置に戻すことは物理的に不可能です。

セルフケアは、肌の健康を維持し、老化のスピードを遅らせるための土台作りと考えるのが適切です。根本的な構造から改善するには、医療的な介入が必要になります。

クリニックでできるエラスチンへのアプローチ

美容クリニックでは、様々な治療法でたるみやほうれい線にアプローチします。

ヒアルロン酸注入のように溝を直接埋める治療や、レーザーや高周波(RF)治療のように熱エネルギーで線維芽細胞を刺激し、コラーゲンやエラスチンの生成を促す治療があります。

セルフケアでは届かない真皮層やさらに深い層に直接働きかけることができるのが大きな利点です。

フェイスリフト手術がもたらす長期的な効果

数ある治療法の中でも、特にたるみが進行した方に対して、最も根本的で長期的な効果が期待できるのがフェイスリフト手術です。

この手術は、単に皮膚表面を引っ張るだけではありません。たるみの根本原因であるSMAS(スマス)筋膜という土台部分から引き上げることで、頬の位置を若い頃の状態に戻し、ほうれい線を浅くします。

フェイスリフトの主なメリット

メリット詳細
根本的な改善たるみの原因であるSMAS筋膜から引き上げる。
長期的な持続性一度の手術で効果が長く持続する。
自然な仕上がり顔全体のバランスを整え、若々しい印象を取り戻す。

フェイスリフトは、失われたエラスチンを元に戻すわけではありませんが、たるんだ組織を正しい位置に戻すことで、エラスチン不足によって生じた見た目の問題を解決に導きます。

専門医に相談する重要性

ほうれい線の状態や原因は、一人ひとり異なります。自分に合った治療法を見つけるためには、まず専門の医師による正確な診断を受けることが不可欠です。

経験豊富な医師は、あなたの肌の状態、骨格、たるみの程度を総合的に判断し、フェイスリフト手術をはじめとする様々な選択肢の中から、適した治療計画を提案してくれます。

カウンセリングで悩みや希望をしっかりと伝え、信頼できる医師と共に治療を進めることが満足のいく結果を得るための最も重要な一歩です。

ほうれい線とエラスチンに関するよくある質問

ほうれい線とエラスチンについて、患者様からよくいただくご質問にお答えします。

エラスチン配合の化粧品は本当に効果がありますか?

肌の根本的なエラスチンを増やす効果は期待できません。エラスチンは非常に分子が大きいため、化粧品として塗っても肌の奥にある真皮層まで浸透しないからです。

ただし、肌の表面に留まってうるおいを保ち、一時的なハリを与える保湿効果はあります。

化粧品でエラスチンケアをする場合は、エラスチンそのものではなく、レチノールやナイアシンアミドなど、エラスチン生成をサポートする成分が配合された製品を選ぶ方が有効です。

サプリを飲んだらどのくらいで効果が出ますか?

効果を実感するまでの期間には個人差が大きいです。サプリメントは医薬品ではないため、飲んで数日で劇的な変化が現れるものではありません。

肌のターンオーバーの周期(約1~2ヶ月)を考慮すると、まずは3ヶ月程度、毎日継続して摂取してみることをお勧めします。

効果は肌の弾力だけでなく、関節の動きなど他の部分に先に現れることもあります。焦らず、体の中からじっくりとケアする意識が大切です。

食事でカツオや牛すじをたくさん食べればエラスチンは増えますか?

それらの食品だけを大量に食べても、直接的にエラスチンが大幅に増えるわけではありません。

カツオや牛すじはエラスチンの材料となる良質なタンパク質を豊富に含みますが、摂取したタンパク質は一度アミノ酸に分解されてから体内で再合成されます。

エラスチンを作るためには、ビタミンCや銅、亜鉛といった他の栄養素も必要なので、特定の食品に偏るのではなく、様々な食材をバランス良く食べることが最も重要です。

一度減ってしまったエラスチンは元に戻らないのでしょうか?

完全に元の状態に戻すことは非常に難しいです。エラスチンは体内で新しく作られる能力が非常に低く、20代後半をピークに、加齢とともにその機能は衰えていきます。

そのため、日々のケアで「今あるエラスチンを守り、これ以上減らさない」という予防の観点が非常に重要になります。

すでに進行してしまったたるみやほうれい線に対しては、セルフケアでの回復には限界があるため、フェイスリフト手術などの美容医療によって、構造的な問題を解決することが効果的な選択肢となります。

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