糸リフトで「頬こけ」はなぜ起きる？失敗の原因と後悔しないための対処法・回避術

糸リフト（スレッドリフト）は、メスを使わずにたるみを引き上げ、若々しい印象を目指せる人気の施術です。しかし、手軽さの反面、「施術後に頬がこけてしまった」「かえって老けて見える」といった悩みを持つ方も少なくありません。

頬がこけると、疲れた印象や不健康な印象を与えかねず、大きな後悔につながることもあります。

この記事では、なぜ糸リフトで頬こけが起きてしまうのか、その原因を深く掘り下げ、後悔しないための対処法と回避術について詳しく解説します。

糸リフトで頬がこける主な原因

糸リフトで頬がこけるのは、主に「糸の挿入位置が不適切」「引き上げる力が強すぎる」「患者様の元々の骨格や脂肪量に合っていない」という3つの要因が複合的に関わっています。

これらは医師の技術力や診断力に左右される部分が大きいです。

糸の挿入層が浅すぎる

皮膚の浅い層（皮下脂肪層の浅層や真皮層）に糸を挿入すると、皮膚表面が強く引きつれやすく、凹凸や「こけ」として現れやすくなります。特に皮膚が薄い方の場合、この傾向が顕著です。

糸は、SMAS（スマス）筋膜の近くや皮下脂肪層の深層など適切な深さに挿入し、組織を面で支えるように引き上げることが重要です。

引き上げる力が強すぎる

たるみを改善したいという思いから、糸を強く引き上げすぎると、頬の一部分だけが不自然にへこんでしまうことがあります。

特に、頬骨の下あたりは元々脂肪が少ないため、過度な牽引（けんいん）によってこけが目立ちやすい部位です。

リフトアップ効果と自然な仕上がりのバランスを見極める診断力が求められます。

糸リフトの引き上げ力と挿入層の関係

要因	不適切な場合 (頬こけリスク高)	適切な場合 (頬こけリスク低)
挿入層	浅すぎる (真皮層、脂肪浅層)	適切な深さ (脂肪深層、SMAS近傍)
引き上げ力	強すぎる (局所的な牽引)	適度 (組織全体を支える力)

元々の骨格や脂肪のつき方

患者様ご自身の骨格や脂肪の量が、頬こけの発生に大きく影響します。元々頬の脂肪が少ない方や、頬骨が張っている骨格の方は、わずかな引き上げでもこけが目立ちやすい傾向があります。

医師が施術前にこれらの特徴を正確に把握し、リフトアップの方向や強さを調整する必要があります。

使用する糸の種類や本数が合っていない

糸リフトには、コグ（トゲ）の形状や素材、持続期間によって様々な種類があります。例えば、太く強力なコグを持つ糸を、皮膚の薄い方や脂肪の少ない方に使用すると、引きつれやこけの原因になります。

また、必要な本数に対して少なすぎたり多すぎたりしても、バランスの悪い仕上がりになる可能性があります。

その方のお顔の状態に合わせた糸の選択が大切です。

頬こけは「失敗」なのか？デザインとの関係性

施術後に頬がこけたように感じても、それが一概に「失敗」とは言えないケースもあります。多くの場合、患者様がイメージしていた「理想の仕上がり」と、実際の「施術結果」との間にずれが生じていることが原因です。

このずれは、カウンセリングでの意思疎通の不足から生じることが多いです。

理想の仕上がりイメージのずれ

患者様が「しっかり引き上げたい」と希望し、医師がその通りに施術した結果、頬のラインがシャープになり、ご本人がそれを「こけた」と感じてしまうことがあります。

逆に、医師が「こけ」を懸念してマイルドに引き上げた結果、患者様が「効果が物足りない」と感じることもあります。

理想の仕上がりを言葉や写真で具体的に共有することが重要です。

過度なリフトアップを求めた結果

「とにかく若返りたい」「最大限に引き上げたい」というご要望が強い場合、医師がそれに応えようと強くリフトアップした結果、頬がこけてしまうことがあります。

たるみを強力に引き上げることと、自然な丸みを帯びた頬を維持することは、時に相反する場合があります。

どの程度の変化を望むのか、優先順位を決めておくことも必要です。

術前のカウンセリング不足

頬こけのリスクを回避するためには、術前のカウンセリングが非常に重要です。

医師が患者様の骨格、脂肪のつき方、皮膚の厚みを正確に診断し、どの程度のリフトアップが可能か、どのような変化が予想されるか、そして頬こけのリスクはどれくらいあるのかを丁寧に説明する必要があります。

この説明が不足していると、結果に対する不満が生まれやすくなります。

カウンセリングでの確認事項

確認項目	医師側の確認	患者様側の確認
仕上がりイメージ	患者様の希望を具体的にヒアリング	希望する変化を写真などで明確に提示
リスク説明	頬こけなど起こり得るリスクを説明	不明点や懸念点をすべて質問
施術計画	患者様に合った糸の種類・本数を提案	提案された内容に納得できるか判断

医師の技術力と経験

最終的な仕上がりは、医師の技術力と美的センスに大きく左右されます。お顔は立体的であり、一人ひとり構造が異なります。

解剖学的な知識に基づき、どの層に、どの方向へ、どれくらいの強さで糸を挿入すれば、こけさせずに自然なたるみ改善ができるかを見極めるには、豊富な経験が必要です。

頬こけを恐れるあまり「たるみ改善」が中途半端になっていませんか？

「頬がこけるのが怖い」という不安が大きすぎるあまり、本来の目的である「たるみの改善」が不十分な結果になってしまうケースも少なくありません。

ここでは、その心理的な側面と、より満足度の高い治療選択について考えます。

「こけたくない」という不安が招く妥協

インターネットやSNSで糸リフトの失敗や頬こけといった情報に触れると、「自分もそうなるかもしれない」と不安になるのは当然です。

その結果、カウンセリングで「絶対にこけないように、ごく自然にお願いします」と強く要望することがあり、その要望を尊重し、非常にマイルドな引き上げを選択したとします。

結果として「こけ」は回避できますが、同時に「たるみもあまり変わっていない」という不満が残ることがあります。

頬こけリスクとリフトアップ効果のバランス

糸リフトは、糸の力で物理的に組織を引き上げる施術です。ある程度の引き上げ効果を出すためには、組織を動かす力が必要です。

この力が強すぎれば「こけ」につながり、弱すぎれば「効果不十分」になります。

このバランスの最適解は、患者様のお顔の状態と、ご本人が何を最優先にするかによって決まります。

治療の優先順位と結果の傾向

優先順位	施術の傾向	予想される結果
頬こけの回避 (最優先)	マイルドな引き上げ	こけにくいが、効果実感も控えめ
たるみ改善 (最優先)	しっかりとした引き上げ	効果実感は高いが、こけのリスクも上昇

あなたの「理想の輪郭」を再確認する

あなたが本当に望んでいるのは、「頬がこけないこと」がゴールでしょうか、それとも「たるみが改善された若々しい輪郭」がゴールでしょうか。

もし後者であるならば、糸リフトだけでは限界があるかもしれません。

特に中等度以上のたるみがある場合、糸リフトで無理に引き上げようとすると、こけや不自然さにつながりやすくなります。

フェイスリフト手術という別の選択肢

もし、糸リフトでは「こけ」のリスクが高い、あるいは十分な効果が見込めないと診断された場合、根本的なたるみ治療である「フェイスリフト手術」を検討することも一つの賢明な選択です。

フェイスリフトは、皮膚だけでなく、たるみの根本原因であるSMAS（スマス）筋膜からしっかりと引き上げるため、頬に変な力をかけずに、顔全体を自然で強力にリフトアップすることが可能です。

当院では、糸リフトでご満足いただけなかった方やより確実な効果を望む方へ、フェイスリフト手術もご提案しています。

糸リフトで頬こけが起きやすい人の特徴

糸リフトで頬がこけやすいかどうかは、個人の顔立ちや皮膚の状態に大きく依存します。

以下に該当する方は、特に慎重な施術計画が必要です。

元々頬の脂肪が少ない人

頬の脂肪は、ふっくらとした若々しい印象を作る「クッション」の役割を果たしています。

この脂肪が元々少ない方は、糸で少し引き上げただけでも皮下の組織のラインが浮き彫りになりやすく、頬骨の下が影になり「こけ」として認識されやすいです。

痩せ型で皮膚が薄い人

痩せ型の方は全体的に皮下脂肪が少なく、皮膚も薄い傾向があります。

皮膚が薄いと、挿入した糸のラインが透けて見えたり、コグ（トゲ）による引きつれが表面化しやすくなります。そのため、わずかな凹凸も目立ってしまいます。

頬こけリスクのセルフチェック

特徴	リスク度：高	リスク度：低
頬の脂肪	少ない、触れても薄い	多い、ふっくらしている
体型	痩せ型	標準～ふくよか
皮膚の厚み	薄い、つまみにくい	厚い、弾力がある
骨格	頬骨やエラが張っている	丸顔、卵型

骨格的に頬骨が目立つ人

頬骨が高い、あるいは横に張っている骨格の方は、頬骨のすぐ下の部分が影になりやすい構造をしています。

糸リフトで頬の肉が上方に引き上げられると、この影がさらに強調され、頬がこけた印象が強まることがあります。

リフトアップする方向の調整が重要です。

加齢によりコラーゲンが減少している人

加齢に伴い、皮膚のハリや弾力を支えるコラーゲンやエラスチンは減少します。皮膚自体の「ふっくら感」が失われている状態（スキニーフェイス）で糸リフトを行うと、皮膚がしぼんだような、こけた印象になりやすいです。

この場合は、糸リフトと同時にヒアルロン酸注入などでボリュームを補う治療が適していることもあります。

頬こけを回避するために施術前にできること

糸リフトによる頬こけは、適切な準備とクリニック選びによってリスクを大幅に減らすことが可能です。

施術を決める前に、患者様ご自身でできることがいくつかあります。後悔しないために、以下の点を実行してください。

経験豊富な医師を選ぶ

糸リフトは手軽な印象がありますが、実は非常に繊細な技術と解剖学の知識を要する施術です。医師の経験値が仕上がりを大きく左右します。

クリニックのウェブサイトで症例写真を確認する際は、単に「上がっているか」だけでなく、「不自然なひきつれやこけがないか」という視点でもチェックしましょう。

医師選びのポイント

• 糸リフトの症例数が多いか
• 解剖学の知識が豊富か
• 美的センスが自分と合うか

カウンセリングで懸念を正確に伝える

カウンセリングは、医師に自分の希望を伝える最も重要な場です。「頬がこけるのが怖い」という懸念は、遠慮せずに具体的に伝えてください。

「以前、別の施術でこうなった」などの経験があれば、それも重要な情報です。医師と患者様の目線が合うまで、じっくりと話し合うことが大切です。

自分の状態に合った施術法を理解する

医師から提案された施術法（糸の種類、本数、挿入方法）について、なぜそれが自分に適しているのか、理由をしっかりと説明してもらいましょう。

例えば、「あなたは皮膚が薄いので、この細く柔軟な糸を使います」「頬骨の下は避け、こめかみ方向に引き上げます」といった具体的な説明があれば、納得して施術を受けられます。

糸の種類と主な特徴

糸の素材（例）	特徴	適応の傾向
PDO (ポリジオキサノン)	吸収が早め。引き上げ力は中程度。	比較的若い方、皮膚が薄い方
PCL (ポリカプロラクトン)	吸収が遅く持続が長い。柔軟性がある。	しっかり持続させたい方、自然な仕上がり希望の方
PLLA (ポリ乳酸)	吸収は中間。コラーゲン生成能が高い。	ハリも同時に出したい方

複数のクリニックで相談する

一つのクリニックの意見だけで即決せず、可能であれば2〜3箇所のクリニックでカウンセリングを受けることをお勧めします。

それぞれの医師の診断や提案内容、人柄、クリニックの雰囲気を比較することで、ご自身が最も信頼できると感じる医師に出会える可能性が高まります。

もし糸リフトで頬がこけてしまったら？対処法

万が一、糸リフトの施術後に頬がこけてしまったと感じた場合、まずは落ち着いて適切な対処をとることが重要です。施術直後は腫れやむくみで一時的にそう見えることもあります。

慌てて自己判断せず、専門家である医師の指示に従ってください。

施術後のダウンタイム期間は安静に待つ

施術直後から約1〜2週間は、腫れ（むくみ）や内出血、そして糸が組織に馴染むまでの「ひきつれ感」が出やすい時期です。

この時期は、腫れの影響で一時的に凹凸やこけが目立つことがあります。まずは処方された薬を服用し、安静にして様子を見ましょう。

時間の経過とともに腫れが引き、糸が馴染むことで改善することが多いです。

医師への速やかな相談

ダウンタイム（通常1〜2週間程度）を過ぎても、明らかに頬がこけている、ひきつれが改善しないという場合は、我慢せずに施術を受けたクリニックに連絡し、診察の予約を取りましょう。

写真を撮って記録しておくと変化を説明しやすいです。

不安なまま過ごすよりも、医師の診察を受けることが最善の解決策です。

施術後の経過と対処

時期	状態	対処法
施術直後～2週間	腫れ、むくみ、ひきつれ感	安静に過ごし、様子を見る。
2週間～1ヶ月経過後	明らかなこけ、凹凸が残存	施術したクリニックに連絡し、診察を受ける。

糸の調整や追加

医師の診察の結果、糸の引き上げが強すぎたり、挿入位置が不適切だったりしたことが原因と判断された場合、修正が行われます。

糸が馴染む前であれば、マッサージなどでこけを緩和できることもあります。

また、こけた部分の周囲に別の糸を追加挿入し、輪郭をなだらかに整えることで改善を図る場合もあります。

脂肪注入やヒアルロン酸注入による修正

糸による調整が難しい場合や、元々の脂肪が少なすぎることが原因である場合は、こけた部分にボリュームを補う治療が選択されます。ご自身の脂肪を採取して注入する「脂肪注入」や、手軽に行える「ヒアルロン酸注入」などがあります。

どちらも凹んだ部分をふっくらさせ、滑らかなフェイスラインを取り戻すのに有効な方法です。

主な修正方法の比較

修正方法	主な内容	メリット
糸の調整・追加	糸の位置調整や、別部位への追加挿入	原因（糸）に直接アプローチできる
ヒアルロン酸注入	こけた部分にヒアルロン酸を注入	手軽に行え、即時的な効果が期待できる
脂肪注入	自身の脂肪を採取し、こけた部分に注入	アレルギーのリスクが低く、生着すれば長持ちする

糸リフトの頬こけに関してよくある質問

頬こけはどれくらいの期間で治りますか？

一概には言えませんが、多くの場合、施術直後の腫れやむくみが引く1〜2週間程度で、一時的なこけやひきつれは改善します。糸が組織に馴染むのには1ヶ月程度かかることもあります。

もし1ヶ月経過しても明らかなこけが残っている場合は、自然に治る可能性は低いため、施術を受けた医師にご相談ください。

頬こけ修正のための再施術はいつから可能ですか？

修正内容によって異なります。ヒアルロン酸注入などでボリュームを補う場合は、腫れが完全に引いた1ヶ月後程度から可能なことが多いです。

糸の追加や入れ替えを行う場合は、組織が落ち着くのを待つため、3ヶ月から6ヶ月程度の期間を空けることを推奨する場合があります。まずは医師の診断を受けてください。

糸リフトでこけた頬は元に戻せますか？

はい、多くの場合、適切な処置によって改善は可能です。原因が糸の引き上げすぎであれば、糸の調整やマッサージで緩和を図ります。

ボリュームロスが原因であれば、ヒアルロン酸や脂肪の注入でふっくらとさせることができます。諦めずに、まずは信頼できる医師に相談することが重要です。

頬こけしない糸リフトの受け方はありますか？

リスクをゼロにすることはできませんが、減らすことは可能です。最も重要なのは、ご自身の顔の骨格や脂肪のつき方を熟知し、解剖学的な知識が豊富な医師を選ぶことです。

そしてカウンセリングで「こけたくない」という懸念をしっかり伝え、引き上げの強さやデザインについて医師と入念にすり合わせを行ってください。