糸リフトの相場は？「激安」クリニックの落とし穴と安くて上手い医師の選び方

顔のたるみを解消し小顔効果を期待できる糸リフトですが、クリニックによって価格設定には大きな開きがあります。

糸リフトの相場や激安広告の裏側にある真実を知ることは、後悔のない施術を受けるために必要です。安易に価格だけで選んでしまうと、効果が持続しなかったり、思わぬ高額請求につながったりするリスクも潜んでいます。

本記事では、適正価格を見極めるための知識や、費用を抑えつつも技術力の高い信頼できる医師を選ぶための具体的な判断基準を詳しく解説します。

糸リフトの相場と価格が決まる仕組み

糸リフトの相場は使用する糸の種類や本数、クリニックの立地や方針によって大きく変動しますが、一般的には1本あたり2万円から10万円程度、顔全体の施術では20万円から60万円程度が目安となります。

価格差が生まれる背景には、原材料費の違いや医師の技術料、アフターケアの充実度などが関係しています。

安さだけを追求するのではなく、価格に含まれるサービス内容や使用する糸の質を理解して選ぶ視点が大切です。

糸の素材と形状による価格の違い

糸リフトで使用する糸には、体内で溶ける素材と溶けない素材があり、それぞれ原材料費が異なります。

現在主流となっているのはPDO（ポリジオキサノン）やPCL（ポリカプロラクトン）といった吸収性の素材です。

PDOは比較的安価で提供しているクリニックが多い一方、PCLは柔軟性が高く持続期間も長いため、価格設定が高くなる傾向にあります。

また、糸に付いているコグ（棘）の形状も価格に影響します。カッティング加工で作られた従来のコグよりも、プレス成型で作られたモルディングタイプのコグは強度が高く、リフトアップ効果が強力である分、費用も上がります。

素材や加工技術の進化に伴い、新しいタイプの糸は原材料費が高くなるため、それが施術費用に反映します。

主要な糸の種類と特徴別価格目安

糸の素材・種類	特徴と持続期間	1本あたりの価格目安
PDO（ポリジオキサノン）	安価で一般的。持続は半年から1年程度。	2万円～5万円
PCL（ポリカプロラクトン）	柔軟性があり長持ち。持続は2年程度。	4万円～8万円
PLA/PLLA（ポリ乳酸）	硬さがあり引き上げ力が強い。持続は1年半。	3万円～6万円

必要な本数による総額の変動

糸リフトの料金は基本的に1本あたりの単価に本数を掛け合わせて算出するため、挿入する本数が増えれば総額も高くなります。

たるみの程度や目指す仕上がりによって必要な本数は変わりますが、片側3本から5本、両側で6本から10本程度を入れるケースが一般的です。

軽度のたるみであれば少ない本数でも変化を感じられますが、しっかりとしたリフトアップ効果を出したい場合や、持続性を高めたい場合は、さらに多くの本数を追加する必要があります。

また、フェイスラインだけでなく、ほうれい線やマリオネットラインなど複数の部位を同時に引き上げる場合も本数が増加します。

提示された金額が1本単位なのか、あるいは部位ごとのセット価格なのかを確認することが大切です。

技術料と麻酔代などのオプション費用

施術費用には糸の代金だけでなく、医師の技術料や麻酔代、薬代などが含まれる場合があります。特に経験豊富な医師や指名料がかかる医師の場合、基本料金に上乗せされることがあります。

静脈麻酔や笑気麻酔を使用する場合は別途数千円から数万円の費用が発生することも珍しくありません。

激安を謳うクリニックの中には、これらの必須となるオプション費用を広告価格に含めていない場合があります。

カウンセリングの際には、糸の代金以外にかかる全ての費用を含めた総額の見積もりを出してもらい、内訳を細かくチェックすることが重要です。

術後の痛み止めや抗生剤の処方、再診料が含まれているかも確認すべきポイントとなります。

「激安」広告の裏側にあるビジネスモデル

インターネットやSNSで見かける「1本数千円」といった激安の糸リフト広告には、集客を目的とした明確な意図とビジネスモデルが存在します。

極端に安い価格設定は、あくまで入り口としての役割を果たしており、実際にその価格だけで理想的な施術を受けられるケースは稀です。

クリニック運営には家賃や人件費、広告費といった多額の経費がかかるため、利益を確保するために様々な手法で単価を上げる仕組みが構築されています。

消費者としては、安さの理由を正しく理解し、冷静な判断を下す姿勢が必要です。

集客用商品とおとり広告の実態

広告で提示されている破格の値段は、集客のための「ドアノック商品」である可能性が高いです。

例えば「1本2000円」と宣伝していても、それは非常に細くて短い、リフトアップ効果がほとんど期待できないショッピングスレッドと呼ばれる糸である場合があります。

実際にカウンセリングに行くと、広告の糸では希望する効果が出ないことを説明し、より高価な糸を勧められることが一般的です。

これは「アップセル」と呼ばれる手法であり、ビジネスとしては一般的ですが、患者側からすると予想外の出費となります。

また、安い糸は耐久性が低く、すぐに効果が薄れてしまうため、結果的に頻繁なメンテナンスが必要となり、長期的にはコストがかさむこともあります。

広告価格と実際の見積もりの乖離例

項目	広告等の表記価格	実際の提案内容
対象の糸	ショッピングスレッド（極細）	コグ付きの強力なリフト糸
推奨本数	片側1本～（お試し）	片側4本～6本（しっかり引き上げ）
麻酔・処置料	別途または記載なし	局所麻酔・笑気麻酔・処置料が必須

新人医師の練習台としての低価格設定

価格が安い理由の一つとして、施術を担当する医師の経験不足が挙げられます。

美容外科医としてのキャリアが浅い医師や、糸リフトの技術習得中の研修医が担当する場合、モニター価格や特別割引として安価に設定することがあります。これはクリニック側が症例数を稼ぎ、医師の技術向上を図るための戦略です。

もちろん、指導医の監督下で行われる場合もありますが、熟練した医師に比べると手技のスピードや正確性、デザイン力に差が出るリスクは否めません。

仕上がりの美しさやダウンタイムの少なさを重視するのであれば、価格だけで判断せず、誰が執刀するのかを確認することが不可欠です。

回転率重視の薄利多売モデル

激安クリニックの中には、一人当たりの利益を薄くする代わりに、多数の患者を施術することで収益を上げる薄利多売モデルを採用しているところがあります。

このようなクリニックでは、医師やスタッフが一人ひとりの患者にかける時間が極端に短くなる傾向があります。

カウンセリング時間が数分で終了したり、流れ作業のように施術が行われたりすることで、患者の悩みや希望が十分に反映されない恐れがあります。

また、アフターケアがおろそかになることも懸念されます。糸リフトは繊細なデザインと技術を要する施術であるため、十分な時間をかけて丁寧に対応してくれる環境であるかを見極めることが大切です。

価格だけで選んだ場合に起こりうる失敗とリスク

予算を抑えることは大切ですが、価格の安さだけを基準にクリニックを選ぶと、満足のいく結果が得られないばかりか、修正が困難なトラブルに巻き込まれる可能性があります。

糸リフトは皮膚の下に異物を挿入する医療行為であり、失敗すれば外見に大きな影響を及ぼします。

安価な施術には、使用する材料の質や医師の技術力、衛生管理などの面でコストカットが行われている場合があるため、潜在的なリスクを十分に理解しておく必要があります。

効果が感じられない、または持続期間が極端に短い

安い費用で施術を受けたものの、直後から変化が乏しい、あるいは数週間で元の状態に戻ってしまったという失敗例は後を絶ちません。

これは、使用した糸の引き上げ力が弱い場合や、挿入する本数が不足している場合に起こりやすい現象です。また、医師が適切な層（SMAS層や皮下組織）に糸を挿入できていない場合も、十分なリフトアップ効果が得られません。

安価なプランでは本数制限が設けられていることが多く、たるみの状態に対して物理的に引き上げ力が足りないまま施術を終えてしまうことがあります。

結果として、すぐに再施術が必要になり、追加費用がかかってしまう本末転倒な事態になりかねません。

肌の凹凸やひきつれが生じるトラブル

技術力が未熟な医師が施術を行うと、糸を挿入する深さが一定でなくなり、肌表面に凹凸やひきつれ（ディンプル）が生じることがあります。

特に皮膚の浅い層に太い糸を入れてしまうと、糸の形状が浮き出て見えたり、笑った時に不自然なえくぼができたりします。

激安クリニックでは、個々の骨格や皮膚の厚みを考慮せず、マニュアル通りの画一的な挿入を行うケースがあり、これが不自然な仕上がりを招く原因となります。

軽度のひきつれは時間と共に馴染むこともありますが、重度の場合は糸を抜去しなければ治らないこともあり、精神的な負担も大きくなります。

感染症や神経損傷などの重篤なリスク

衛生管理が不十分な環境での施術は、感染症のリスクを高めます。コスト削減のために使い捨て器具を使い回したり、消毒が不徹底であったりするクリニックは絶対に避けるべきです。

感染が起きると、患部が赤く腫れ上がり、痛みや膿を伴います。最悪の場合、挿入した糸を全て取り除く手術が必要になります。

また、顔面には多数の神経が走行しており、解剖学的な知識が乏しい医師が誤った位置に糸を通すと、顔面神経を傷つけてしまう恐れがあります。

その結果、顔の麻痺や感覚障害が残る可能性もゼロではありません。

安全性を確保するためには、設備投資や衛生管理にコストをかけている信頼できるクリニックを選ぶことが重要です。

安くて技術力の高い医師を見極めるポイント

費用を抑えつつも高品質な糸リフトを受けるためには、医師の選び方が極めて重要です。

広告の華やかさや価格の安さに惑わされず、医師個人の実績や資格、対応力を客観的に評価する視点を持つことで、コストパフォーマンスの高い施術へと繋がります。

名医と呼ばれる医師は、少ない本数でも最大限の効果を引き出す技術を持っているため、結果的に費用対効果が良くなることも多々あります。

症例写真の数ではなく質と経過を確認する

多くのクリニックがホームページやSNSで症例写真を公開していますが、単に枚数が多いだけで判断するのは危険です。施術直後の腫れている状態の写真だけでなく、1ヶ月後、3ヶ月後の経過写真が掲載されているかを確認してください。

直後は麻酔の影響や腫れで引き上がって見えても、腫れが引いた後にどう定着しているかが重要です。

また、自分と似た骨格やたるみの状態の症例を探し、その変化率を見ることで、医師のデザイン力や適応判断の正確さを推測できます。

加工アプリで修正された写真ではなく、自然なライティングで撮影されたリアルな写真掲載を行っている医師は信頼性が高いと言えます。

医師選びでチェックすべき資格と所属学会

• 日本形成外科学会認定専門医（JSPRS）
• 日本美容外科学会認定専門医（JSAPSまたはJSAS）

美容外科医の中には、形成外科の専門医資格を持たずに施術を行っている医師もいます。糸リフトは解剖学の知識が必須となるため、基礎となる形成外科のトレーニングを積んでいるかどうかが技術の担保となります。

特に「日本形成外科学会認定専門医」の資格は、一定年数の研修と手術実績、試験合格が必要となるため、解剖学に精通している一つの指標となります。

カウンセリングでの提案力とリスク説明の有無

「安い」だけでなく「上手い」医師は、カウンセリングの質が明らかに異なります。

患者の希望を聞くだけでなく、骨格や皮膚の状態を見て「この施術は効果が出にくい」「この本数では足りない」といったネガティブな情報も正直に伝えてくれる医師は信用できます。

逆に、どんな要望に対しても「安くできます」「絶対上がります」と調子の良いことしか言わない医師や、強引に契約を迫る医師は避けるべきです。

また、ダウンタイムや合併症のリスクについても隠さずに説明し、万が一トラブルが起きた際の対応策を提示してくれるかどうかも、医師の誠実さを測るバロメーターとなります。

費用を抑えて賢く糸リフトを受ける方法

質の高い施術を受けたいけれど予算には限りがある場合、安易に激安クリニックに飛びつくのではなく、正当な方法で費用を抑える工夫をすることが賢明です。

クリニックが公式に用意している制度や割引システムを上手く活用することで、技術力のある医師の施術を相場よりも安く受けられる可能性があります。

安全性を犠牲にせずにコストダウンを図るための具体的な手段を紹介します。

モニター制度を積極的に活用する

多くの美容クリニックでは、症例写真の提供やアンケート協力を条件に、通常料金よりも安く施術を受けられるモニター制度を設けています。

割引率はクリニックや露出範囲（全顔、目隠し、部分など）によって異なりますが、20パーセントから50パーセント程度の割引が適用されることが一般的です。

モニターといっても、使用する糸や施術工程は通常料金の患者と全く変わりません。実績のある医師の施術をお得に受けられる有効な手段です。

ただし、審査がある場合や、術後の経過観察のために通院が必要になる場合があるため、条件をよく確認して応募することが大切です。

通常料金とモニター料金の比較イメージ

露出範囲	割引率の目安	条件例
全顔（顔出し）	50％OFF～無料	HP、SNS、広告への掲載許可
部分（目隠し）	20％～30％OFF	HP、SNSへの掲載許可
院内資料用	10％～20％OFF	外部公開なし、カウンセリング資料用

キャンペーンやポイント制度をチェックする

季節ごとのキャンペーンや、開院記念、医師の技術導入キャンペーンなどを利用するのも一つの手です。特にゴールデンウィークや夏休み、年末年始の前にはお得なプランが出ることがあります。

また、クリニック独自のポイント制度や、LINE登録によるクーポンの配布を行っている場合も多いです。これらを組み合わせることで、数万円単位で費用を節約できることがあります。

さらに、複数の施術を組み合わせる「セット割引」を活用し、ヒアルロン酸注射やボトックスと同時に行うことで、トータルコストを下げつつ相乗効果を狙うという戦略も有効です。

将来を見据えたコストパフォーマンスの計算

目先の金額だけを見るのではなく、効果の持続期間を含めたトータルコストで考える視点も重要です。

例えば、1本2万円で半年しか持たない糸を頻繁に入れるよりも、1本5万円で2年持つ糸を入れた方が、長期的に見れば1ヶ月あたりのコストは安くなる場合があります。

また、質の高い施術を受けて一度で満足する結果を得ることは、修正や追加施術にかかる無駄な費用を防ぐことにも繋がります。

「安物買いの銭失い」にならないよう、1年、2年というスパンで美容にかける予算を配分し、一回あたりの質を高める選択をすることが結果として最も経済的な方法と言えます。

糸リフトと切開リフトの費用対効果比較

たるみ治療を検討する際、糸リフトと切開リフト（フェイスリフト）のどちらを選ぶべきか悩む人は少なくありません。切開リフトは皮膚を切除して引き上げる手術で、効果は半永久的と言われますが、費用もダウンタイムも大きくなります。

一方、糸リフトは手軽ですが効果は限定的です。

自身の年齢やたるみの進行度、予算に合わせて適切な方を選ぶことが無駄な出費を抑える鍵となります。

初期費用とランニングコストの違い

糸リフトは初期費用が数万円から数十万円と比較的安価ですが、効果を持続させるためには1年から2年ごとのメンテナンスが必要です。

10年間維持しようとすれば、その都度費用が発生します。

対して切開リフトは、100万円前後の高額な初期費用がかかりますが、一度行えば5年から10年以上の長期的な効果が期待できます。

長期間にわたってたるみを解消し続けたいと考えるならば、トータルの支払い額は切開リフトの方が安く済む場合もあります。

しかし、一度に大きな金額を用意するのが難しい場合や、将来的に手術を受けるまでの「つなぎ」として考えるなら、糸リフトの方が資金計画を立てやすいというメリットがあります。

施術法による比較一覧

比較項目	糸リフト	切開リフト
初期費用目安	20万円～60万円	80万円～150万円
効果持続期間	1年～2年	5年～10年以上
ダウンタイム	数日～1週間	2週間～1ヶ月
傷跡	針穴のみで目立たない	耳の周りなどに切開線が残る

年齢とたるみ具合による適正判断

20代から30代の初期のたるみや、将来のたるみ予防（プリベンション）を目的とする場合、切開リフトは侵襲が大きすぎるため、糸リフトが第一選択となります。

この年代で定期的に糸リフトを行い、肌のハリを維持することは、将来的な大きな老け込みを防ぐ投資として価値があります。

一方、50代以降で皮膚の余りが著しい場合、糸リフトだけでは引き上げきれず、効果とお金が見合わない結果になりがちです。

重度のたるみに対して無理に糸だけで対処しようとすると、本数がかさみ高額になる上に、すぐに後戻りしてしまいます。自分の年代とたるみの状態に適した施術を選ぶことが、最もコストパフォーマンスの良い選択となります。

よくある質問

糸リフトの施術中は痛いですか？

施術中は局所麻酔や静脈麻酔を使用するため、痛みを感じることはほとんどありません。麻酔の注射をする際にチクリとした痛みを感じることはありますが、それも一瞬です。

施術後は麻酔が切れると鈍痛を感じることがありますが、処方される痛み止めでコントロールできる範囲内です。

仕事や学校はいつから行けますか？

基本的には施術翌日から通常の生活に戻れます。腫れや内出血が出る場合もありますが、マスクやメイクで隠せる程度であることが多いです。

ただし、口を大きく開けたり、激しい運動をしたりするのは1週間から2週間程度控えることが推奨されます。大事な予定がある場合は、念のため数日の余裕を持ってスケジュールを組むと安心です。

糸リフトは何回も繰り返し受けて大丈夫ですか？

はい、繰り返し受けることができます。むしろ、定期的に挿入することで、糸の周りにコラーゲンが生成され、肌のハリや弾力が増していく効果（コラーゲン貯金）が期待できます。

前回の糸が完全に吸収される前に追加することで、リフトアップ効果を維持しやすくなります。

一度入れた糸は抜くことができますか？

基本的には、一度挿入した糸を抜くことは困難です。特にトゲ（コグ）がついている糸は組織に食い込んでいるため、無理に抜こうとすると組織を傷つけるリスクがあります。

感染症などの明らかなトラブルがない限り、自然に吸収されるのを待つのが一般的です。そのため、施術前の医師選びとシミュレーションが非常に重要になります。