近年、メスを使わずにリフトアップを図れる選択肢として糸リフトに注目する方が増えてきました。しかし、手軽さが強調されがちな一方で、糸リフトには知られていないデメリットや、施術を避けたほうが無難なケースも存在します。
この記事では、糸リフトがどのような仕組みで行われ、どんなリスクやメリットがあるのか、そしてやめた方がいいと考えられる場合について詳しく解説します。
医学博士 日本形成外科学会 専門医
日本美容外科学会 会員
【略歴】
獨協医科大学医学部卒業後、岩手医科大学形成外科学講座入局。岩手医科大学大学院卒業博士号取得、2014年に日本形成外科学会専門医取得。大手美容クリニックの院長を経て2017年より百人町アルファクリニックの院長を務める。
百人町アルファクリニックでは、糸を使った切らないリフトアップから、切開部分が目立たないフェイスリフトまで患者様に適した方法をご提案していますが、若返り手術は決して急ぐ必要はありません。
一人ひとりの皮下組織や表情筋の状態に合わせた方法を探し「安全性」と「自然な仕上がり」を第一に心がけているため、画一的な手術をすぐにはいどうぞ、と勧めることはしていません。
毎回手術前の診断と計画立案に時間をかけすぎるため、とにかく安く、早くこの施術をして欲しいという方には適したクリニックではありません。それでも、リフトアップの施術を年間300件行っている実績から、患者様同士の口コミや他のドクターからのご紹介を通じ、全国から多くの患者様に当院を選んでいただいています。
このサイトでは、フェイスリフトやたるみに関する情報を詳しく掲載しています。どうか焦らず、十分に勉強した上で、ご自身に合ったクリニックをお選びください。もちろん、ご質問やご相談があれば、いつでもお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。
糸リフトの概要と手術の流れ
美容医療の現場では、フェイスリフトよりも短時間でできる施術として糸リフトが提案されることが多いです。しかし、実際にどのように施術が行われるのかを知らないまま検討している方もいるかもしれません。
ここでは糸リフトの概要や代表的な手術の流れ、術後の過ごし方などを解説します。
糸リフトとは何か
糸リフトとは、皮下に特殊な糸を挿入してたるんだ皮膚や筋膜を上方へ引き上げる施術です。メスを入れるフェイスリフト手術ほど大がかりではなく、比較的短時間で終了し、入院の必要もありません。
そのため「気軽に受けられるリフトアップ」として知られています。しかし、糸リフトに使う糸には素材の特徴や張力の違いがあり、それによって術後の持続期間や仕上がりが異なります。
一般的には吸収性の糸と非吸収性の糸が使用されます。吸収性の糸は、体内に一定期間残り、コラーゲン生成を促しながら数カ月から数年で吸収されます。
一方、非吸収性の糸は組織に埋没したまま残るため、糸そのものによる引き上げ効果が長期的に働きます。ただし、糸が残り続けるリスクを考え、メリットとデメリットを理解したうえで選択することが重要です。
糸リフトで使われる糸の素材例
糸の種類 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
吸収性 | 数カ月〜数年で体内に吸収される | ダウンタイムが比較的短い | 効果が徐々に減少し、効果持続期間が短め |
非吸収性 | 体内に残り続ける | 長期的にリフト効果を保ちやすい | 炎症や異物感が生じるリスクがある |
手術の概要
糸リフトの手術は局所麻酔または静脈麻酔を使って行うことが多く、施術自体はおおむね30分~60分程度で完了します。
まず、医師が糸を挿入する部位をデザインし、皮膚にマーキングします。その後、針やカニューレを用いて頬やフェイスラインなどのたるみを引き上げたい部分に糸を通していきます。
引き上げの強さや糸の本数は、患者の希望や皮膚のたるみ具合によって調整します。
一度挿入した糸を再調整することも可能ですが、繰り返し糸を抜き差しする行為は組織への負担が大きくなりやすいため、カウンセリング時に医師としっかり相談することが大切です。
術後のダウンタイムとケア
糸リフトはメスを入れる施術に比べてダウンタイムが短めといわれますが、それでも個人差があります。腫れや内出血、むくみが数日から1週間ほど続く方もいます。
大切なのは、術後に患部を無理に触らないことや、マッサージや激しい運動などで糸や皮膚に負担をかけないことです。医師から指示されるアフターケアを守らずにいると、糸がずれてしまったり、感染リスクが高まったりします。
- 術後数日は表情の動きを控えめにする
- うつ伏せ寝や長時間のスマホ操作など、フェイスラインを圧迫する姿勢を避ける
- 入浴はシャワー程度にし、長時間の入浴やサウナは控える
- 無理なマッサージや強いメイク落としは避ける
上記のような注意点を守らないと、思わぬ副作用やトラブルの原因になります。クールダウンや傷口の清潔ケアは重要ですので、施術前に医師からしっかりと指示を受けましょう。
糸リフトとフェイスリフト手術の違い
糸リフトは針穴から糸を挿入して皮膚を引き上げますが、フェイスリフト手術では耳の周辺を切開して皮膚や筋膜をしっかり持ち上げます。
その結果、フェイスリフトのほうがたるみを大きく改善できる可能性がありますが、術後のダウンタイムが糸リフトより長くなり、傷跡も大きく残ります。
糸リフトはダウンタイムや傷跡が小さい反面、持続力やリフトアップ効果が限定的であることが多いため、自分の希望するゴールに合わせて手術方法を選ぶ必要があります。
糸リフトのメリットとデメリット
糸リフトに興味を持つ方の多くは、「メスを使わずに手軽にできる」といったイメージを抱いているかもしれません。しかし、糸リフトにはメリットと同時に見落としがちなデメリットが存在します。
ここでは、その両面について解説し、糸リフトとフェイスリフトの比較も行います。
糸リフトのメリット
糸リフト最大のメリットは、外科的な切開がほとんど不要な点です。そのため、傷跡が目立ちにくく、入院の必要もありません。
施術後の腫れや痛みも比較的軽度で終わる方が多く、施術当日または翌日から普段の生活に復帰しやすいといわれています。
糸リフトの主なメリット
- 施術時間が短く、通院の負担が少ない
- 大きな傷跡が残りにくい
- ダウンタイムが比較的短い
- 麻酔が局所麻酔の場合もあり、身体への負担が少ない
また、糸によるコラーゲン生成が期待できるため、肌質改善やハリの向上にもメリットを感じる方がいます。
特に吸収性の糸を使用する場合、糸が溶けていく過程で皮下組織にコラーゲンが生成され、肌の弾力アップが見込まれるケースがあります。
糸リフトのデメリット
糸リフトのデメリットとしては、まず効果の持続期間が短い傾向が挙げられます。糸が吸収されるタイプの場合、半年から1年程度で引き上げ効果が薄れていくことが多いです。
また、非吸収性の糸を使用する場合でも、糸そのものが物理的に顔の動きに追従するため、時間が経つにつれ緩んだり下がったりする可能性があります。
さらに、糸特有の異物感が残ることや、施術後に糸が透けて見える、引っ張られているようなツッパリ感が生じるなどのリスクもあります。皮膚が薄い方や乾燥肌の方だと、こうしたトラブルを起こしやすい傾向があるため注意が必要です。
また、医師の技術によって仕上がりや安全性に差が出やすい面も見逃せません。経験が浅い医師が施術すると、糸の位置がずれてしまったり、思ったような効果が得られないリスクが高まります。
糸リフトのデメリットと考えられる原因
デメリット | 原因・背景 | 対応策 |
---|---|---|
効果の持続期間が短い | 吸収糸の場合、糸が溶けていく | 非吸収性糸や他の施術併用 |
ツッパリ感や異物感 | 糸が皮下組織を引き上げ続ける | 適切な糸の種類と挿入技術 |
糸の透け・凸凹 | 表皮が薄い部位で糸が表面に近すぎる | 経験豊富な医師の施術選択 |
効果のばらつきや左右差 | 個人差や医師の技術による | 事前の入念なカウンセリング |
メリット・デメリットのバランス
糸リフトは傷跡が少なくて済み、リフトアップの変化を手軽に試しやすい反面、持続力が弱いことや術後の細かなトラブルリスクが存在します。
糸リフトだけでなく、たとえばヒアルロン酸注入やボトックス注射など他の美容医療とも比較して、自分に合った方法かどうかを見極めることが大切です。
また、糸リフトを複数回受けることでリフト効果が蓄積していくケースもありますが、そのぶん費用とリスクが増す面も考慮しましょう。
フェイスリフトとの比較
フェイスリフトは、耳の前や髪の生え際などを切開し、皮膚や筋膜(SMAS)を大きく引き上げる施術です。大掛かりな手術になるものの、糸リフトよりも長期的かつ大幅にたるみを改善できる可能性があります。
術後の回復に時間がかかったり、傷跡が残るデメリットはありますが、年齢を重ねて皮膚のたるみが強く出た方には根本的なリフトアップが実感しやすいというメリットがあります。
ご自身の年齢やたるみの度合い、ダウンタイムの許容度合いによって適切な方法を選ぶとよいでしょう。
糸リフトが向いている人の特徴
糸リフトはすべての方に適しているわけではありませんが、特定のニーズやライフスタイルを持つ方にとっては魅力的な選択肢になることがあります。ここでは、糸リフトが向いていると考えられる主な特徴を紹介します。
年齢層や肌の状態
糸リフトは比較的軽度な皮膚のたるみや、頬の落ち込みが気になる方に向いています。具体的には30代~40代あたりで、まだ本格的な切開を伴うリフト手術に踏み切るほどではないという方に適しています。
もちろん50代や60代でも利用するケースはありますが、その場合は糸だけでは効果が物足りないと感じる可能性もあるため、フェイスリフトとの併用や別の施術を検討することが大切です。
糸リフトが適している主な条件
- 軽度から中等度のたるみが気になる
- 大きな切開を避けたい
- 比較的若い年代または初期のエイジングケアを望む
- 日常生活への影響を最小限にしたい
ダウンタイムを短くしたい人
忙しくて長い休みを取れない方や、仕事柄ダウンタイムを極力短くしたい方にも糸リフトは検討しやすい施術です。
切開を伴うフェイスリフトに比べれば、糸リフトの術後の腫れや内出血などは軽度であることが多く、マスクを着用できる環境であれば施術の翌日から外出や出勤が可能なこともあります。
ただし、あまりにも忙しくて術後のケアを怠ってしまうと、炎症や糸のズレなどのトラブルが起こるリスクが高まります。仕事と施術のスケジュールをきちんと管理し、最低限のアフターケアの時間を確保できるかを考慮しましょう。
長期的な効果を求めない人
「とりあえず小顔効果を試してみたい」「少しだけたるみを改善してみたい」という方にとって、糸リフトは短期間で顔の印象を変えられる施術です。
糸リフトには効果が永続的ではないという特徴があり、一度で長期間の効果を得たい方には不向きです。しかし逆にいえば、効果が弱まってきた時点で追加施術をするかどうかを柔軟に選べる利点もあります。
糸リフトが向いている人・向いていない人
向いている人 | 向いていない人 |
---|---|
軽度から中等度のたるみ改善を望む | 皮膚のたるみが著しく、抜本的なリフトアップが必要な人 |
ダウンタイムを短く抑えたい | 長期休暇が取れるため大幅なリフト効果を求める人 |
短期間の効果でも気軽に試したい | 一度の手術で長期的な効果を得たい |
小さな傷跡や体への負担をできるだけ減らしたい | 傷跡よりも大幅な若返りを優先したい |
施術後に得られる印象の変化
糸リフト後は、頬の位置が少し上がってフェイスラインがシャープになるなど、比較的ナチュラルな印象変化が見られます。
大幅な変化を求める方には物足りないかもしれませんが、周囲に整形感を与えにくい点や、徐々に肌質が改善していく過程を楽しめる点をメリットと感じる方もいます。
より大きな若返り効果を狙うならフェイスリフトのほうが適している場合もあるため、目指すイメージを医師にしっかり伝えましょう。
糸リフトをやめた方がいい場合と判断基準
糸リフトは比較的安全性の高い施術とされていますが、すべての人にとってプラスになるわけではありません。ここでは、糸リフトを「やめた方がいい」と考えられるケースや、その理由について整理します。
過度な期待をしている方
糸リフトはメスを入れるフェイスリフトの代替ではありますが、実際のところ得られる効果や持続期間には限界があります。
多くの美容外科の宣伝文句で「メスを使わずに若返る」とうたわれるため、大変な期待を抱く方がいます。しかし、実年齢より大きく若返るほどの効果を、1度の糸リフトに求めるのは現実的ではありません。
こうした「糸リフトだけで劇的に若返る」過度な期待をしている方は、施術後の仕上がりに不満を抱きやすくなります。
持病やアレルギーのリスク
医療行為において、持病やアレルギーリスクは無視できません。例えば血液凝固異常がある方や、膠原病などの自己免疫疾患がある方、ケロイド体質の方などは、通常よりもトラブルが起こりやすい場合があります。
麻酔や糸の素材に対するアレルギーも考慮する必要がありますので、カウンセリング時に正直に自分の体調や既往歴を伝えることが大切です。
糸リフトを避けるか慎重に検討すべき主なケース
- 血液凝固異常や自己免疫疾患がある
- 過去に糸素材でアレルギー症状を起こした
- 糸の異物感に耐えられそうにない
- カウンセリングで説明されたリスクを十分に理解できない
極度の皮膚たるみのある方
年齢を重ねて皮膚のたるみが大きく進行している場合、糸リフト単独では十分な改善が見込めないことがあります。このようなケースでは、フェイスリフトなどの切開を伴う手術のほうが効果が高いと考えられます。
糸リフトを何度も追加するよりも、最初から本格的な施術を受けたほうが費用やリスクの面で合理的な場合もあります。カウンセリングの際に、医師の診断を仰ぐとよいでしょう。
本格的な若返りを希望する方
たとえ軽度から中等度のたるみであっても、より根本的に顔全体を大きく引き上げたいという希望がある場合は、フェイスリフトなどを検討する価値があります。
糸リフトの引き上げ効果はあくまで限られた範囲にとどまるため、一度の施術で大幅な若返りを狙うには限界があります。
本格的な手術にはダウンタイムや傷跡というデメリットがあるものの、その分だけ確かな引き上げ効果を期待できるというメリットがあるため、希望と妥協点を明確にして選択してください。
糸リフトのよくない口コミ・評判の理由
糸リフトを検討するうえで気になるのが「実際に施術を受けた人の口コミ」です。ネット上には「糸リフトはよくない」という声や、「糸リフトをやめたほうがいい」といった意見も少なくありません。
ここでは、そのような否定的な評判を生む理由を整理していきます。
施術の事例を見ていると、糸リフトのネガティブな評価の多くは、施術後の違和感や期待はずれの効果に関係しています。
実際、肌質やたるみの度合いによっては、糸リフトが十分に効果を発揮しにくいケースがあることも事実です。カウンセリング時に自分の状態と糸リフトが見込める効果をしっかりと理解することが大切といえます。
痛みや異物感
糸リフト後の痛みやツッパリ感、皮下に糸があることによる異物感は否定できません。個人差があるとはいえ、「ずっと突っ張った感覚が続く」「口を大きく開けにくい」「こめかみや耳の周辺が痛い」といった声があります。
特に施術後しばらくは腫れや内出血も相まって、不快感を強く感じやすいです。
糸リフト後に起こり得る不調と主な原因
不調 | 原因 | 対応法 |
---|---|---|
ツッパリ感・異物感 | 糸が皮膚や筋膜を引っ張り続ける | 時間の経過とともに軽減、適切なケア |
痛み・しびれ | 皮下組織への刺激や神経への軽度の影響 | 痛み止めの服用、安静 |
腫れ・内出血 | 施術時の針やカニューレによる刺激 | 冷却や安静により徐々に回復 |
糸の透け・凹凸 | 糸が浅い層に入ってしまう | 技術の高い医師による適切な挿入深度 |
思ったより短い効果の持続
糸リフトの効果は半年から1年ほどで徐々に薄れていくとされることが多いです。施術直後は引き上げ効果に満足していても、数カ月後には「もう効果がわからない」という意見が出ることもあります。
このように思ったよりも短い効果持続期間が、「糸リフトはよくない」という評価につながりやすいのです。
吸収糸の種類や本数、術後のケアなどによって個人差がありますが、初回施術で過剰に期待してしまうと、結果として不満が大きくなりやすいです。
不自然な仕上がり
顔の左右差や局所的な引きつり感など、不自然な仕上がりに不満を感じる声も見られます。これは、医師の経験や技術が大きく左右する部分です。
糸を挿入する深度や引き上げる方向、本数の選択などを誤ると、思わぬ左右非対称や凸凹感が目立ちやすくなります。
「メスを使わないから簡単そう」と思われがちですが、実際には細かい解剖学的知識と熟練の技術が必要です。施術を受けるクリニック選びや医師選択で失敗しやすい点といえます。
技術不足によるトラブル
糸リフトは歴史のある施術ですが、さまざまな新しい糸素材やテクニックが生まれています。医師がその特性を十分に理解していなかったり、症例経験が不足していたりすると、トラブルが起きるリスクが高まります。
糸が切れてしまう、糸が皮膚表面に浮いて透ける、感染が起きるなど、深刻な問題も実際に報告されています。
こうしたトラブルがクローズアップされることで、「糸リフトはよくない」「糸リフトをやめたほうがいい」といった評判を助長する側面があります。
糸リフト後の注意点とアフターケア
糸リフトは大きなリスクが少ない施術とはいえ、術後に油断するとトラブルを招くことがあります。短いダウンタイムを過信せず、正しいアフターケアを行ってこそ、良好な仕上がりと持続効果を得やすくなります。
ここでは術後に注意すべき点や、トラブルが起きた場合の対処法などを紹介します。
術後の生活で気をつけること
術後の数日は、患部をできるだけ安静に保ちましょう。うつ伏せ寝や、フェイスラインを圧迫するような姿勢は避けたほうがいいです。長時間スマートフォンを操作すると、首や頬に負担がかかり、糸のずれや腫れの悪化につながる場合があります。
術後に強くこすったり、マッサージをしたりするのは早期トラブルの原因になり得ます。メイクや洗顔も、できるだけやさしく行い、傷口付近は清潔に保つようにしてください。
術後に心がけたいポイント
- 就寝時は仰向けで頭を少し高くして寝る
- 長時間の下向き作業を避け、姿勢に気を配る
- 入浴は短時間で済ませ、強い水圧や熱い湯を避ける
- 激しい運動や顔への衝撃があるスポーツは控える
トラブル時の対処法
万が一、糸が突き出てきたり、腫れや痛みが治まらず強くなったりした場合は、自己判断で糸を引っ張ったり、切ったりしないよう注意が必要です。
まずは施術を受けたクリニックに連絡して、医師に相談することが大切です。放置すると感染症のリスクが高まるだけでなく、患部の変色や瘢痕化など深刻な問題を引き起こす場合があります。
糸リフト後のトラブルと初期対応の目安
トラブル例 | 初期対応 | 受診の必要性 |
---|---|---|
腫れ・痛みが想定より長引く | 安静にして冷却、寝不足や飲酒を控える | 1週間以上改善がなければ要相談 |
糸が透ける・突き出る | 自力で糸を切らない、触らない | 早めに医師に連絡 |
内出血が大きく広がる | 血行を促す行為(長風呂や激しい運動)を避ける | 症状が悪化する場合は要受診 |
赤みや熱感が強くなり感染の疑い | 洗顔や消毒を慎重に行い、できるだけ清潔な状態を保つ | 速やかに医師に連絡 |
ダウンタイムの過ごし方
ダウンタイムといっても、糸リフトの場合はそこまで長く続くケースばかりではありません。個人差はありますが、1週間ほどで大半の腫れや痛みが引くことが多いです。
大切なのは、腫れや内出血を抑える生活習慣を心掛け、患部を安静に保つよう注意することです。アルコールや塩分の多い食事はむくみを助長しやすいので、できるだけ控えることをおすすめします。

効果を長持ちさせるポイント
糸リフトの効果を長引かせるためには、肌の乾燥を防ぎ、血行を促すケアも大切です。
適度な保湿ケアやUVカット、バランスの良い食事と十分な睡眠など、健康的なライフスタイルを維持することで、コラーゲン生成などの肌代謝が促され、リフトアップ効果がやや持続しやすくなる可能性があります。
また、数カ月おきのメンテナンス治療として、ボトックス注射やヒアルロン酸注入を組み合わせる方も増えています。
糸リフトからフェイスリフトへ移行するタイミング
糸リフトで満足していても、年齢を重ねるにつれて皮膚のたるみが進行し、糸リフトでは対応が難しくなる時期が来るかもしれません。
また、初めから大幅なリフトアップを希望するなら、糸リフトではなくフェイスリフトを選ぶのが適切なケースもあります。ここでは糸リフトからフェイスリフトへ移行するタイミングを検討する際のポイントを解説します。
効果の物足りなさを感じた場合
糸リフトの回数を重ねても、十分な引き上げ効果を得られないと感じる方は少なくありません。特に加齢が進むと、皮膚だけでなく筋膜や脂肪のたるみも顕著になるため、糸の物理的な引き上げだけでは対応しきれなくなります。
そのタイミングでフェイスリフト手術を検討すると、大きな変化を実感できる場合があります。
年齢を重ねた肌状態への対応
50代以降になると、ほうれい線やマリオネットラインなどが深く刻まれ、糸による浅いリフトアップだけでは改善が難しくなる傾向にあります。
こうした深いたるみには、切開して余分な皮膚や脂肪を除去したうえで筋膜をしっかり引き上げるフェイスリフトが向いている場合が多いです。
ただし、糸リフトとフェイスリフトを併用する選択肢もあるため、必ずしも一方を諦める必要はありません。カウンセリングで自分の肌状態を見極めることが大切です。
ダウンタイムがとれる時期
フェイスリフト手術は糸リフトよりもダウンタイムが長く、術後に2週間ほどの休暇を要することもあります。仕事や家事・育児などで忙しい方は、その分長期間の休みを確保することが難しい場合もあるでしょう。
しかし、人生のライフイベントによってある程度長期休暇を取れるときに、フェイスリフトへ切り替える方もいます。計画的にスケジュールを立て、術後のケアに十分な時間を費やすことで、より満足度の高い結果が得やすくなります。
費用と効果のバランス
糸リフトは施術1回あたりの費用がフェイスリフトより安価な場合が多いですが、効果の持続期間が短めです。そのため、数年ごとに複数回の糸リフトを行う場合は、トータル費用がフェイスリフトの費用を上回るケースもあります。
また、大幅な若返り効果を望むのであれば、糸リフトを何度も続けるよりもフェイスリフトに投資したほうが結果的に費用対効果が高い場合があります。費用と効果のバランスを考慮して、自分に合った施術タイミングを選ぶとよいでしょう。
クリニック選びとカウンセリングの重要性
糸リフトを考えるとき、カウンセリングの質や医師の技術力は非常に重要です。術後の仕上がりやトラブルリスクを大きく左右する要素となるため、信頼のおけるクリニックを選ぶことが求められます。
ここでは、クリニック選びで注目すべきポイントや、カウンセリングで確認すべき点についてまとめます。
カウンセリングで確認すべきポイント
カウンセリングは、医師と直接対話し、自分の希望と施術内容のすり合わせを行う場です。糸リフトの特徴や効果の限界、ダウンタイム、リスクなどをしっかり説明してくれる医師を選ぶと安心です。
特に、「どの糸を使うか」「糸を何本挿入するか」「費用はどのくらいかかるか」といった具体的な質問をぶつけ、納得いく回答を得られることが大切です。
カウンセリングで医師に尋ねたい質問例
質問項目 | 理由 |
---|---|
どのタイプの糸を使用するか | 効果の持続期間や異物感などのリスクが違うため |
必要な糸の本数や施術範囲 | 仕上がりのイメージや費用に直結する |
ダウンタイムの目安や注意点 | 日常生活に及ぶ影響を把握し、スケジュールを調整する |
他の施術との併用可能性 | 効果を高める選択肢があれば検討できる |
術式の提案と説明
カウンセリングで医師が一方的に糸リフトを勧めてくる場合は少し注意が必要です。患者の年齢やたるみの度合いによっては、フェイスリフトやヒアルロン酸注入など他の術式のほうが効果的なこともあります。
誠実な医師であれば、糸リフトだけでなく複数の選択肢を提示し、そのメリットやデメリットを丁寧に説明してくれるはずです。自分の希望や予算、ライフスタイルに合った術式を提案してもらえるかどうかを見極めましょう。
医師の実績と相性
糸リフトの仕上がりは医師の技術力によって大きく左右されます。実績や症例数が豊富な医師は、さまざまなケースに対応してきた経験があるため、適切な施術を行える可能性が高いでしょう。
また、医師との相性も見逃せません。施術後の経過観察やアフターケアについて気軽に相談できるかどうかも重要です。カウンセリング時のコミュニケーションで安心感を得られるかどうかを判断材料にするとよいでしょう。
医師選びで注意したい点
- 実際の症例写真やビフォーアフターを見せてもらえるか
- カウンセリングで質問しやすい雰囲気を作ってくれるか
- リスクやデメリットも包み隠さず説明してくれるか
- 無理な勧誘や不自然な割引を持ちかけてこないか
料金体系とアフターフォロー
糸リフトはクリニックによって料金体系が異なります。本数ごとに料金が設定されている場合や、頬・フェイスラインなど部位別に料金が分かれている場合もあります。
事前に提示される料金にカウンセリング料や麻酔代、アフターケアにかかる費用が含まれているかを確認しておくと安心です。
また、アフターフォローの体制も重視すべきポイントです。万が一トラブルが起きたときに迅速に対応してもらえるか、再診料や抜糸費用など追加費用がどの程度発生するのかを把握し、納得してから施術を受けるようにしてください。
ここまで糸リフトのメリット・デメリットや、やめた方がいい場合、フェイスリフトとの比較などを詳しく解説してきました。切らないリフトアップとして人気の糸リフトですが、施術後に不満が出ないようにするためには、事前の情報収集とクリニック選びが大切です。
糸リフトがすべての方にとってメリットだけの施術ではないことを理解し、必要に応じてフェイスリフトなど他の選択肢も検討する姿勢が重要といえるでしょう。
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