糸リフトの種類と仕組みを徹底解説 – 選び方のポイント

顔のたるみやフェイスラインのもたつきは、多くの方が抱える悩みの一つです。糸リフト(スレッドリフト)はメスを使わずに、リフトアップ効果や肌質の改善が期待できる治療法として注目されています。

しかし糸には様々な種類があり、どの糸が自分に適しているのか、どのような仕組みで効果が出るのか、不安や疑問を感じる方も少なくありません。

この記事では糸リフトの種類ごとの特徴や効果の仕組み、施術の流れ、そしてご自身に合った治療を選ぶためのポイントを医学的知見に基づき詳しく解説します。

この記事を書いた人

百人町アルファクリニック 院長 荻野 和仁

荻野 和仁
百人町アルファクリニック 院長
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医学博士 日本形成外科学会 専門医
日本美容外科学会 会員

【略歴】
獨協医科大学医学部卒業後、岩手医科大学形成外科学講座入局。岩手医科大学大学院卒業博士号取得、2014年に日本形成外科学会専門医取得。大手美容クリニックの院長を経て2017年より百人町アルファクリニックの院長を務める。

百人町アルファクリニックでは、糸を使った切らないリフトアップから、切開部分が目立たないフェイスリフトまで患者様に適した方法をご提案していますが、若返り手術は決して急ぐ必要はありません。

一人ひとりの皮下組織や表情筋の状態に合わせた方法を探し「安全性」と「自然な仕上がり」を第一に心がけているため、画一的な手術をすぐにはいどうぞ、と勧めることはしていません。

毎回手術前の診断と計画立案に時間をかけすぎるため、とにかく安く、早くこの施術をして欲しいという方には適したクリニックではありません。それでも、リフトアップの施術を年間300件行っている実績から、患者様同士の口コミや他のドクターからのご紹介を通じ、全国から多くの患者様に当院を選んでいただいています。

このサイトでは、フェイスリフトやたるみに関する情報を詳しく掲載しています。どうか焦らず、十分に勉強した上で、ご自身に合ったクリニックをお選びください。もちろん、ご質問やご相談があれば、いつでもお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。

目次

糸リフトとは?顔のたるみを改善する治療法

近年注目を集める糸リフト(スレッドリフト)について、その基本的な情報や効果、他の治療法との違いを解説します。

たるみ治療の選択肢として糸リフトを検討されている方は、まず基本を押さえておきましょう。

顔のたるみやもたつきの原因

顔のたるみやフェイスラインのもたつきは単一の原因で起こるものではありません。加齢に伴う皮膚の弾力性の低下が大きな要因です。

皮膚のハリを支えるコラーゲンやエラスチンが減少し、質も変化することで皮膚自体の支える力が弱まります。

また皮下脂肪が減少したり、重力の影響で下方に移動したりすることもたるみの原因となります。

顔の皮膚や脂肪を支えている支持靭帯(リガメント)がゆるむこと、さらには顔の筋肉の衰えや緊張の変化、そして土台となる骨格が加齢により萎縮することも複合的に影響し合い、顔全体のたるみやもたつきとして現れます。

紫外線によるダメージの蓄積や喫煙、急激な体重変動といった生活習慣もたるみを助長する要因と考えられています。

  • 加齢変化
  • 紫外線曝露
  • 皮下脂肪の変化
  • 支持組織の弛緩
  • 筋肉の影響

このようにたるみの原因が多岐にわたるため、一つの側面からアプローチするだけでは十分な改善が得られない場合があります。

糸リフトが物理的な引き上げ効果と、組織の再生を促す生物学的な効果の両方を併せ持つ点は、これらの複合的な原因に対応する上で有効な選択肢となり得ます。

糸リフトが注目される理由

糸リフトが美容医療の分野で広く注目されている背景には、いくつかの理由があります。

最も大きな理由はメスを使用する従来のフェイスリフト手術と比較して、身体への負担が少なくダウンタイム(回復期間)が大幅に短いことです。

切開を伴わないため傷跡の心配が少なく、施術時間も比較的短時間で済むため、多忙な方や手術に抵抗がある方でも受けやすい治療法と認識されています。

さらに単に皮膚を引き上げるだけでなく、糸の刺激によって肌内部のコラーゲン生成が促進され、肌質の改善効果も期待できるという多面性も支持される理由の一つです。

効果を求めつつもダウンタイムは最小限に抑えたい、という現代のニーズに合致した治療法と言えるでしょう。

糸リフトで期待できる効果

糸リフト治療によって期待できる効果は、大きく二つに分けられます。

一つ目は糸、特にコグ(トゲ)付きの糸による物理的なリフトアップ効果です。

たるんだ皮膚や皮下組織を糸で直接引き上げることにより、フェイスラインがシャープになったり、ほうれい線やマリオネットラインが浅くなったりする変化が期待できます。頬の位置が高く見えるようになることもあります。

二つ目は糸が皮下に挿入されることによる生物学的な効果です。糸という異物に対する体の反応として、糸の周囲でコラーゲンやエラスチンの生成が促進されます。

これにより肌のハリや弾力が増し、キメが整いツヤ感が向上するといった肌質自体の改善効果が見込めます。

  • フェイスラインの引き締め
  • ほうれい線の改善
  • マリオネットラインの改善
  • 頬の位置の改善
  • 肌のハリ・ツヤ向上

物理的な引き上げ効果は施術直後から実感しやすいですが、コラーゲン生成による肌質改善効果は時間をかけて現れます。

この即時的な効果と遅延性の効果が組み合わさることで、総合的な若返り効果が期待できるのです。

他のたるみ治療との違い

顔のたるみ治療には糸リフト以外にも様々な選択肢があります。

例えばヒアルロン酸注入は、ボリュームが減少した部位に注入することで、くぼみや影を目立たなくし、間接的にリフトアップ効果をもたらします。

ボツリヌス治療は筋肉の動きを抑制することで、表情ジワの改善やフェイスラインの引き締めに用いられます。

HIFU(高密度焦点式超音波)やRF(高周波)といったエネルギーデバイスを用いた治療は、皮膚や皮下組織に熱エネルギーを与えて組織を収縮させ、コラーゲン生成を促すことでたるみを改善します。

これらに対し、糸リフトは物理的に組織を引き上げる力が他の非外科的治療よりも強い点が特徴です。

ただしどの治療法が最適かはたるみの原因や程度、求める効果によって異なります。場合によっては糸リフトと他の治療法、例えばヒアルロン酸注入やHIFUなどを組み合わせることで、より満足度の高い結果を得られることもあります。

それぞれの治療法の特性を理解し、医師と相談しながら最適な治療計画を立てることが重要です。

糸リフトの種類を素材別に解説

糸リフトの効果や持続期間は使用される糸の「素材」によって大きく異なります。

ここでは代表的な糸の素材であるPDO、PLLA、PCLについて、それぞれの特徴や体内での吸収過程、それがもたらす効果の違いなどを詳しく見ていきましょう。

PDO(ポリジオキサノン)糸の特徴と効果

PDO(ポリジオキサノン)は数十年前から外科手術の吸収性縫合糸として広く使用されてきた実績があり、安全性が確立されている素材です。

体内では約6ヶ月から1年かけてゆっくりと加水分解によって水と二酸化炭素に分解され、最終的には完全に吸収されます。

この吸収される過程で糸の周囲の組織に適度な刺激を与え、線維芽細胞を活性化させることでコラーゲン生成を促進する効果が期待されます。

素材としては比較的しなやかで柔軟性があり、皮下組織内で馴染みやすいのが特徴です。安全性の高さとコラーゲン生成効果のバランスが取れていますが、他の素材と比較すると体内に存在する期間はやや短い傾向にあります。

そのため初めて糸リフトを受ける方や、肌質の改善を主目的とする場合、あるいは比較的マイルドな変化を希望する場合に適していると考えられます。

PLLA(ポリ乳酸)糸の特徴と効果

PLLA(ポリ乳酸)もPDOと同様に生体吸収性の素材ですが、より強力にコラーゲン生成を誘導する作用があることで知られています。ジャガイモなどから得られるデンプンを原料として作られることもあります。

体内での吸収期間はPDOよりも長く、約1年半から2年程度です。

PDOに比べると素材自体はやや硬めですが、その分しっかりとしたリフトアップ効果や組織の支持力が期待できます。長期間にわたって皮下組織を刺激し続けるため、持続的なコラーゲン増生効果が見込めます。

しっかりとしたリフト効果と長期的な肌質改善を求める方に適していますが、素材が硬めであるため、挿入する医師にはより繊細な技術と経験が求められます。

不適切な層への挿入や扱い方を誤ると、糸が触れたり引きつれ感が出たりするリスクがPDOよりもやや高まる可能性があるため、医師選びが特に重要になります。

PCL(ポリカプロラクトン)糸の特徴と効果

PCL(ポリカプロラクトン)はPDOやPLLAよりもさらにゆっくりと、約2年から3年あるいはそれ以上の時間をかけて体内で吸収される素材です。

非常に柔軟性が高くしなやかな点が最大の特徴で、表情の動きにも自然にフィットしやすいとされています。

長期間にわたり皮下組織を刺激し続けるため、持続的なコラーゲン生成効果とリフトアップ効果が期待できます。効果の持続期間を最も重視する方に適した素材と言えるでしょう。

柔軟性が高いため、挿入後の違和感や引きつれ感が比較的少ない傾向にありますが、効果の発現はPDOやPLLAに比べてやや穏やかである可能性も指摘されています。

ゆっくりと時間をかけて効果が現れ、長期間持続することを希望する方や、顔の動きが多い部位への適用に適しています。

素材による持続期間と吸収性の違い

これまで見てきたように糸リフトに使用される糸の素材は、それぞれ体内で吸収される速度が異なります。この吸収速度の違いが、効果の持続期間に直接的な影響を与えます。

素材による主な特性比較

素材 (Material)主な特徴 (Key Feature)吸収期間目安 (Approx. Absorption Time)
PDO安全性高い、しなやか約6ヶ月~1年
PLLAコラーゲン生成強い、硬め約1年半~2年
PCL持続期間長い、柔軟性高い約2年~3年

吸収される過程で周囲の組織を刺激しコラーゲン生成を促す点は、どの素材にも共通する重要な効果です。しかしその刺激の強さや持続する期間には差があるため、期待する効果や持続期間に応じて素材を選択することが大切です。

医師とのカウンセリングでそれぞれの素材のメリット・デメリットをよく理解し、ご自身の希望に合ったものを選びましょう。

糸リフトの形状による違いと特徴

糸リフトの効果を左右するのは素材だけではありません。糸の「形状」もリフトアップ効果や肌質改善効果に大きく関わる重要な要素です。

コグ(トゲ)の有無や形状、糸全体の構造によって、期待できる効果や適した部位が異なります。

コグ(トゲ)付き糸のリフトアップ力

現在主流となっている糸リフトの多くは「コグ」と呼ばれるトゲ(突起)が糸の表面に付いています。このコグが皮下組織にしっかりと引っ掛かることで、たるんだ皮膚や脂肪組織を物理的に力強く持ち上げることが可能です。

コグの形状(切れ込み型、成形型など)、向き(一方向、双方向、多方向)、密度、大きさなどは糸の種類によって様々で、これらの設計の違いが引き上げる力(リフトアップ力)や効果の持続性に影響します。

フェイスラインの引き締めや頬のたるみ改善など、しっかりとしたリフトアップ効果を求める場合に特に有効で、多くの糸リフト治療で中心的な役割を果たしています。

ただし強力なリフトアップ力を持つ反面、挿入する医師の技術が未熟だと、皮膚表面に凹凸ができたり、引きつれ感が生じたりするリスクも伴います。適切な深さへの正確な挿入と、適度なテンション調整が重要です。

メッシュタイプやその他の形状の糸

コグ付き糸以外にも、様々な形状の糸が存在します。メッシュタイプは文字通り網目状の構造をしており、糸が面となって組織を支えるような効果を発揮します。

コグ付き糸ほどの強力なリフトアップ力はありませんが、広範囲の肌にハリを与えたり、引き締めたりする効果が期待できます。

またメッシュ構造の中に自己組織が入り込むことで、より自然なボリュームアップ効果や長期的な効果持続に寄与するとも考えられています。

このほかにも糸自体がらせん状になったスクリュータイプは、糸の体積によってわずかなボリュームアップ効果をもたらしたり、コラーゲン生成をより広範囲に促したりする目的で使われます。

コグのないシンプルな形状のモノフィラメントタイプ(モノ糸)は、主に肌のハリやツヤの改善、引き締めといった肌質改善を目的として、多数本を皮下に挿入する治療(ショッピングリフトなどと呼ばれることもあります)に用いられます。

  • コグ付き(トゲ付き)
  • メッシュ
  • スクリュー
  • モノフィラメント(コグなし)

これらの多様な形状の糸は、単にたるみを引き上げるだけでなく、ボリューム調整や肌質改善といった、より細やかなニーズに応えるために開発されてきました。

治療部位や目的に応じて、これらの形状を単独で用いたり、組み合わせたりすることで、より効果的な治療が可能になります。

形状による効果と適用部位の違い

糸の形状によって得意とする効果や適した部位が異なります。

形状による主な効果と適用部位

形状 (Shape)主な効果 (Main Effect)適した部位例 (Example Suitable Area)
コグ付き (Cogged)強力なリフトアップフェイスライン、頬、首
メッシュ (Mesh)面でのサポート、ハリ向上頬全体、目の下
スクリュー (Screw)ボリューム、肌質改善ほうれい線、マリオネットライン
モノ (Mono)肌質改善、ハリ額、目の周り、口周り

コグ付き糸は、その強力なリフトアップ力を活かして、フェイスラインのもたつき、頬全体のたるみ、首のしわやたるみなど、比較的広範囲でしっかりとした引き上げが必要な部位に主に用いられます。

一方メッシュタイプは頬全体のハリ感を出したい場合や、目の下のたるみのようにデリケートな部位を面で支えたい場合に適しています。

スクリュータイプやモノフィラメントタイプは、リフトアップ力は穏やかですが、コラーゲン生成促進による肌質改善効果を主目的として、額の小じわ、目の周りのちりめんじわ、口周りのハリ不足など、皮膚の浅い層や細かな部位へのアプローチに用いられることが多いです。

患者様の悩みやたるみの状態、部位に合わせてこれらの形状を適切に選択、あるいは組み合わせて使用します。

糸の太さや長さが与える影響

糸の形状だけでなく、その太さや長さも効果の出方や施術後の経過に影響を与えます。一般的に糸が太く長くなるほど、組織を支える力や引き上げる力は強くなる傾向があります。

より強力なリフトアップ効果を期待する場合には、太く長い糸が選択されることがあります。

しかしその反面、太い糸を使用すると挿入時の感覚が強くなったり、施術後の腫れや内出血、違和感などがやや強く出たりする可能性も考えられます。

一方、細く短い糸は、主に肌質の改善や細かな部位への適用を目的とする場合に用いられ、挿入時の負担やダウンタイムは比較的軽い傾向にあります。

治療する部位の皮膚の厚さやたるみの程度、期待する効果のレベル、そして患者様のダウンタイムへの許容度などを総合的に考慮し、最適な太さと長さの糸を選択します。

効果の高さと侵襲性(体への負担)のバランスを見極めることが重要です。

糸リフトはどのように効果を発揮するのか

糸リフトが顔のたるみを改善する効果は、単に糸で物理的に引っ張り上げるだけによるものではありません。

皮下に挿入された糸が組織に働きかけることで、「物理的な引き上げ作用」と「生物学的な組織反応」という二つの側面から効果を発揮します。ここではその仕組みを詳しく解説します。

糸による物理的な引き上げ作用

糸リフトによるリフトアップ効果の最も直接的な仕組みは、糸、特にコグ(トゲ)付き糸による物理的な引き上げ作用です。

施術の際、コグが付いた糸を皮下の適切な層(多くはSMAS筋膜の近くや脂肪層)に挿入します。糸に付いているコグが周囲の組織にしっかりと引っ掛かり、アンカー(錨)のような役割を果たします。

そして糸を引き上げる操作を行うことで、コグが引っ掛けた組織全体が目的の位置まで移動し、固定されます。これが施術直後から感じられるリフトアップ効果の主な原理です。

どの深さの層に、どの方向に、何本の糸を挿入するか、そしてどの程度の強さで引き上げるかといった医師の技術的な要素によって、リフトアップの程度や仕上がりの自然さが大きく左右されます。

この物理的な作用は、たるんで下がってしまった組織を元の位置近くに戻すための重要な働きを担っています。

皮下組織への刺激とコラーゲン生成促進

糸リフトの効果は物理的な引き上げだけにとどまりません。皮下に糸という「異物」が挿入されること自体が、体にとっては一種の微小な傷となります。

すると体は自然な治癒反応(創傷治癒反応)を開始します。この反応の過程で、糸の周囲にマクロファージなどの炎症細胞が集まり、続いて線維芽細胞が活性化されます。

線維芽細胞は、皮膚のハリや弾力を保つために重要な成分であるコラーゲンやエラスチンを新たに生成する働きを持っています。つまり挿入された糸が刺激源となり、自身の肌細胞がコラーゲンなどを活発に作り出すように促されるのです。

この作用は、使用される糸の素材(PDO、PLLA、PCL)に関わらず起こります。

生成された新しいコラーゲン線維は、糸の周囲にネットワークを形成し、肌の内部から組織を引き締め、ハリや弾力をもたらします。

この生物学的な効果は、糸リフトの効果を持続させ、肌質そのものを改善する上で非常に重要な役割を果たしています。

肌質の改善効果について

前述のコラーゲン生成促進に加えて、糸の挿入による刺激は、周囲の微小な血管の新生を促し、血行を改善する効果も期待されます。

血行が良くなることで、皮膚細胞への酸素や栄養の供給が向上し、新陳代謝、いわゆる肌のターンオーバーが活性化される可能性があります。

コラーゲンが増えることによる構造的なサポートの強化と、血行改善による細胞レベルでの活性化が組み合わさることで、肌全体のハリ感、ツヤ、弾力、キメ細かさなどが総合的に向上する、いわゆる「肌質の改善」効果が見込めるのです。

これは単にたるみを引き上げるだけでなく、肌そのものを若々しく健やかな状態に導く効果と言えます。

リフトアップと同時に肌質の底上げを図れる点が、糸リフトの大きな魅力の一つです。

効果が現れる時期と持続期間の目安

糸リフトの効果は、その種類によって現れ方や持続期間が異なります。物理的なリフトアップ効果は、施術直後から鏡を見て変化を実感することができます。

ただし施術直後は麻酔の影響や多少の腫れがあるため、最終的な引き上がり具合は腫れが引いて落ち着く1週間から1ヶ月後くらいに安定してきます。

一方、コラーゲン生成促進による肌質の改善効果は、すぐには現れません。

創傷治癒反応とコラーゲンのリモデリングには時間がかかるため、通常は施術後1ヶ月から3ヶ月くらいかけて徐々に効果が現れ始め、その後も肌のハリや弾力が向上していくのを感じられるでしょう。

効果発現と持続の目安

効果の種類 (Type of Effect)効果発現時期 (Onset Time)効果のピーク目安 (Approx. Peak Time)持続期間目安 (Approx. Duration)
物理的リフトアップ施術直後施術直後~1ヶ月糸の種類による (半年~3年)
コラーゲン生成・肌質改善1~3ヶ月後から徐々に3~6ヶ月後糸の吸収後も一定期間持続

効果全体の持続期間は、使用する糸の種類(素材や形状)、挿入する本数、患者様自身の体質(代謝速度など)や生活習慣(喫煙、体重変動など)によって大きく変動します。

一般的な目安としては、PDO糸で半年~1年、PLLA糸で1年半~2年、PCL糸では2年~3年程度とされています。

ただしこれは糸が体内に物理的に存在する期間の目安であり、生成されたコラーゲンによる引き締め効果は、糸が完全に吸収された後もある程度持続すると考えられています。

効果の現れ方や持続期間には個人差があることを理解しておくことが大切です。

糸リフトの施術の流れ

糸リフトを受けたいと考えた場合、実際にどのような流れで治療が進むのでしょうか。

ここでは、最初のカウンセリングから施術、そしてアフターケアまでの一般的な流れを解説します。

カウンセリングでの確認事項

糸リフト治療は、まず医師による丁寧なカウンセリングから始まります。

この段階では患者様が顔のどの部分の、どのような点を改善したいと考えているのか(例:フェイスラインのもたつきをすっきりさせたい、ほうれい線を浅くしたいなど)を詳しくヒアリングします。

次に医師が患者様の肌の状態、たるみの程度、脂肪のつき方、骨格などを診察し、糸リフトが適した治療法であるか、また、もし適している場合には、どの種類の糸を、何本くらい、どの部位に、どの方向に挿入するのが最も効果的かを判断します。

そして具体的な施術方法、それによって期待できる効果、考えられるリスクや副作用、ダウンタイム(腫れや内出血など)の程度と期間、そして費用について、分かりやすく説明します。

患者様がこれらの情報を十分に理解し、納得した上で治療に進むことが重要です。

また安全に施術を行うために、既往歴、現在治療中の病気、アレルギーの有無、服用中・使用中の薬(サプリメント含む)などについても必ず確認します。

  • 悩み・希望のヒアリング
  • 診察(肌状態、たるみ程度)
  • 施術計画の説明(糸の種類、本数、部位)
  • 効果・リスク・ダウンタイムの説明
  • 費用確認
  • 健康状態(既往歴、アレルギー等)確認

カウンセリングは、単に施術の説明を受ける場ではありません。患者様と医師が治療のゴールを共有し、信頼関係を築くための大切な時間です。疑問や不安な点があれば、遠慮なく質問しましょう。

麻酔の方法と痛みへの配慮

糸リフトの施術は、多くの場合、痛みを軽減するために麻酔を使用します。一般的には、まず施術部位に麻酔成分が含まれたクリームを塗布する「表面麻酔」を行い、皮膚表面の感覚を鈍らせます。

その後、糸を挿入する経路に沿って、歯科治療などでも用いられる「局所麻酔」の注射を行います。局所麻酔の注射の際にはチクッとした痛みを感じますが、麻酔薬が浸透すれば、その後の施術中に痛みを感じることはほとんどありません。

クリニックによっては、これらの麻酔に加えて、吸入することでリラックス効果や鎮痛補助効果が得られる「笑気麻酔」を併用する場合もあります。

痛みの感じ方には個人差があり、不安が強い方もいらっしゃるでしょう。痛みに弱い方や不安な方は、カウンセリングの際にその旨を伝え、どのような麻酔方法があるか、痛みに対してどのような配慮が可能かを確認しておくと安心です。

主な麻酔方法と特徴

麻酔方法 (Method)特徴 (Features)痛み軽減効果 (Pain Relief Effect)
麻酔クリーム (Cream)皮膚表面の感覚を鈍らせる軽度~中等度
局所麻酔注射 (Injection)施術部位に直接注射し、神経の感覚を遮断する高い
笑気麻酔 (Gas)吸入することでリラックス効果、鎮痛補助効果がある補助的

実際の施術の進め方と所要時間

カウンセリングで決定した治療計画に基づき、実際の施術が始まります。

まず、ベッドに横になった状態で、医師が糸を挿入する位置や方向を示すデザイン(マーキング)を顔の皮膚に行います。次に、施術部位を消毒液で丁寧に消毒し、感染を予防します。

そして計画された方法で麻酔を行います。麻酔が十分に効いていることを確認した後、医師はマーキングに沿って、専用の針(ニードル)または先端の丸い管(カニューレ)を用いて、皮下に糸を挿入していきます。

カニューレを使用する場合は、針穴を開ける箇所が少なくて済むため、内出血や腫れのリスクを低減できるとされています。

糸が必要な本数、適切な層に挿入されたら、糸を引き上げて組織をリフトアップし、効果を確認しながら微調整を行います。

最後に、皮膚表面に出ている余分な糸の端をカットして、施術は終了です。

施術全体の所要時間は、使用する糸の種類や本数、施術範囲によって異なりますが、一般的には30分から1時間程度が目安です。

施術後の注意点とアフターケア

施術が終了した後、少し休憩してから帰宅となります。施術直後は、麻酔の影響が残っているため、少し腫れぼったい感じや違和感があるかもしれません。

また、施術部位には腫れや内出血、多少の痛み、引きつれ感などが生じることが一般的です。これらの症状は通常、数日から長くても2週間程度で徐々に軽減していきます。

施術当日は、血行が良くなると腫れや内出血が悪化する可能性があるため、激しい運動、長時間の入浴、サウナ、飲酒などは控える必要があります。シャワーは当日から可能な場合が多いですが、医師の指示に従ってください。

また、施術後しばらく(約1ヶ月程度)は、顔のマッサージやエステ、うつぶせ寝、歯科治療など、顔に強い圧力がかかったり、大きく口を開けたりする行為は避けるのが望ましいです。

クリニックからは、感染予防のための抗生剤や、痛みを和らげるための鎮痛剤が処方されることがありますので、指示通りに服用してください。

施術後の経過で気になる症状や不安な点があれば、自己判断せず、速やかに施術を受けたクリニックに相談することが大切です。

  • 安静(当日の激しい活動制限)
  • 冷却(腫れ軽減のため)
  • 顔への刺激回避(マッサージ、圧迫禁止)
  • 感染予防(清潔保持、抗生剤服用)
  • 定期的な経過観察

適切なアフターケアを行うことは、ダウンタイムを最小限に抑え、合併症を防ぎ、最終的な仕上がりをより良くするために非常に重要です。

自分に合った糸リフトの選び方

糸リフトには様々な種類の糸があり、クリニックによっても推奨する治療法が異なります。そのため、どの治療を選べば良いのか迷ってしまう方も多いでしょう。

ここでは、ご自身の悩みやライフスタイル、予算などを考慮しながら、後悔のない治療選択をするための考え方と、信頼できる医療機関を見極めるポイントを解説します。

改善したい悩みと期待する効果を明確にする

糸リフトを検討する上で最も重要な第一歩は、ご自身が「何を改善したいのか」そして「どの程度の変化を望んでいるのか」を明確にすることです。

例えば、「フェイスラインのもたつきをシャープにしたい」「深く刻まれたほうれい線を目立たなくしたい」「頬のコケ感が気になるので自然にふっくらさせたい」「顔全体の肌のハリを取り戻したい」など、具体的な悩みや部位を特定しましょう。

次に、その悩みに対してどの程度の改善を期待するのか、イメージを持つことも大切です。

「多少の変化でも良いので、周りに気づかれない程度に自然に若返りたい」「しっかりと引き上げて、見た目の変化を実感したい」「リフトアップよりも肌質の改善を重視したい」など、求める効果のレベルを整理します。

これらの点を事前に自分の中で明確にしておくことで、医師とのカウンセリングの際に希望を的確に伝えることができ、医師も患者様のニーズに合った最適な糸の種類や本数、治療計画を提案しやすくなります。

治療のゴール設定が、満足のいく結果を得るための出発点となります。

ダウンタイムの許容度を考える

糸リフトはメスを使用するフェイスリフト手術に比べてダウンタイムが短い治療ですが、それでも施術後には腫れや内出血、痛み、引きつれ感などが一定期間生じる可能性があります。

これらの症状がどの程度の期間、どの程度までなら許容できるかは、個人のライフスタイルや仕事、社交的な予定などによって大きく異なります。

「仕事があるので、大きな腫れが数日続くのは困る」「内出血が出ても、メイクでカバーできる範囲なら問題ない」「多少の痛みは我慢できるが、引きつれ感が長く残るのは避けたい」など、ご自身の状況を具体的に考え、それをカウンセリングで医師に伝えることが重要です。

糸の種類によるダウンタイム傾向

糸の要素ダウンタイムへの影響傾向理由例
コグ付き・太い糸やや長め・強めに出やすい組織への掛かりが強く、挿入時の刺激が大きい
モノ・細い糸比較的短め・軽度組織への刺激がマイルド
挿入本数が多いやや長め・強めに出やすい刺激される組織の範囲が広い

一般的に、コグ(トゲ)が多く付いている糸や太い糸、挿入する本数が多いほど、組織への刺激が大きくなり、ダウンタイム中の症状が強く出たり、期間が長引いたりする傾向があります。

逆に、コグのない細い糸(モノフィラメントなど)を少数本使用する場合は、ダウンタイムは比較的軽度で済むことが多いです。

ご自身の許容できるダウンタイムの範囲を考慮し、医師と相談しながら、使用する糸の種類や本数を決定していくことが治療後の満足度につながります。

予算と効果のバランス

糸リフトの費用は、使用する糸の種類(素材や形状)、挿入する本数、そして施術を行うクリニックによって大きく異なります。

一般的に、PCLのような吸収期間が長い素材の糸や、特殊な形状(メッシュタイプなど)の糸、また、多くの本数を挿入する場合には、費用が高くなる傾向があります。

まずはご自身が美容医療にかけられる予算の上限をある程度決めておくことが大切です。

その上で、期待する効果の程度(しっかりリフトアップしたいのか、自然な変化で良いのか)や、効果の持続期間(どのくらいの期間、効果が続いてほしいか)とのバランスを考える必要があります。

例えば、初期費用は高くても持続期間が長い糸を選ぶ方が、短い期間で繰り返し施術を受けるよりも、長期的に見るとコストパフォーマンスが良い場合もあります。

単に価格の安さだけで選ぶのではなく、その費用で得られる効果の質、持続性、安全性、そして施術を行う医師の技術力などを総合的に評価し、ご自身にとって最も価値のある選択をすることが重要です。

信頼できるクリニック・医師を選ぶ重要性

糸リフトは、施術を行う医師の技術力、経験、そして美的センスが、最終的な仕上がりと安全性に極めて大きな影響を与える治療です。

顔面の解剖学的な構造(神経や血管の走行、筋肉や脂肪層の位置など)を熟知した上で、適切な深さの層に、適切な種類の糸を、適切な本数と方向で挿入する高度な技術が求められます。

信頼できるクリニックや医師を選ぶためには、いくつかのポイントを確認すると良いでしょう。

まず、カウンセリングの際に、医師がこちらの話を丁寧に聞き、治療内容やリスクについて分かりやすく、十分な時間をかけて説明してくれるかを確認します。

質問に対して曖昧な回答ではなく、的確に答えてくれるかも重要です。その医師が手掛けた糸リフトの症例写真を見せてもらい、ご自身の美的感覚に合うかどうかも判断材料になります。

また、万が一、施術後に何か問題が生じた場合のフォローアップ体制(術後の検診、トラブル時の対応窓口、緊急連絡先の有無など)が整っているかも確認しておきましょう。

クリニックの質を見極めるポイント

評価項目確認内容なぜ重要か
医師の経験・専門性経歴、所属学会、症例数、糸リフトへの習熟度技術力、安全性、美的センスに直結する
カウンセリングの質説明の分かりやすさ、丁寧さ、リスク説明の有無、質問への対応患者の理解度、納得度、信頼関係の構築に関わる
アフターフォロー体制術後の検診、トラブル時の対応窓口、緊急連絡先万が一の際の安心感、長期的な満足度につながる

可能であれば、一つのクリニックだけでなく、複数のクリニックでカウンセリングを受けて、説明内容や医師の対応、費用などを比較検討することもご自身に合った最良の選択をするために有効な方法です。

糸リフトのリスク・副作用とダウンタイム

糸リフトは比較的負担の少ない治療法ですが、どのような医療行為にもリスクや副作用の可能性は伴います。

事前に考えられるリスクやダウンタイム中の症状について正しく理解しておくことは、安心して治療を受け、術後の経過を落ち着いて過ごすために重要です。

考えられるリスクと副作用

糸リフトの施術後に一般的に見られる症状としては、腫れ、内出血、痛み、挿入部位の違和感、引きつれ感などが挙げられます。

これらは通常、一過性のもので、時間の経過とともに自然に軽快していきます。しかし稀に、以下のようなリスクや副作用が起こる可能性もゼロではありません。

主なリスクと内容

リスクの種類具体的な内容頻度/重篤度の目安
一般的な症状腫れ、内出血、痛み、引きつれ感、違和感よく見られる/軽度~中等度、一過性
感染挿入部位の発赤、腫脹、熱感、疼痛、膿まれ/適切な対応が必要
糸の露出・突出糸が皮膚表面に出てくる、触れるまれ/糸の除去や調整が必要
皮膚の凹凸・ひきつれ皮膚表面が不整になる、表情時に線が出るしばしば見られる(軽度)~まれ(遷延性)
神経・血管損傷しびれ、感覚鈍麻、血腫形成極めてまれ/重篤な場合あり

感染は、施術時の消毒が不十分であったり、術後のケアが不適切だったりした場合に起こる可能性があります。

糸の露出や突出は、糸の挿入層が浅すぎたり、糸の端の処理が不適切だったりした場合に起こることがあります。皮膚の凹凸や引きつれは、糸の挿入技術や種類の選択、あるいは患者様の皮膚の薄さなどが原因で生じることがあります。

神経や血管の損傷は極めて稀ですが、顔面解剖の知識が不十分な医師が施術した場合に起こるリスクがあります。アレルギー反応も稀ですが、糸の素材に対して起こる可能性があります。

リスクを最小限に抑えるためには、経験豊富で技術力の高い医師を選ぶこと、そして術後の注意事項をしっかりと守ることが重要です。

ダウンタイム中の一般的な症状と期間

糸リフトのダウンタイム中に最もよく経験される症状は、腫れと内出血です。

腫れは、施術直後から現れ始め、通常は施術後2~3日目をピークに、その後1週間から2週間かけて徐々に引いていきます。冷却することで腫れを軽減する助けになります。

内出血は、糸を挿入する際に細い血管が傷つくことで生じます。

必ずしも全員に出るわけではありませんが、出た場合は、最初は紫色や青色に見え、時間とともに黄色っぽく変化しながら、通常は1週間から2週間程度で自然に吸収され消えていきます。メイクでカバーできる場合が多いです。

痛みや違和感、引きつれ感(特に口を開けたり表情を大きく動かしたりした時)も、数日から2週間程度続くことがありますが、多くの場合、処方される鎮痛剤でコントロールできる範囲です。

これらの症状の程度や期間には個人差が大きいことを理解しておきましょう。

術後の過ごし方と注意点

ダウンタイムをできるだけ短く、そして快適に過ごし、合併症のリスクを減らすためには術後の過ごし方が非常に重要です。

まず、施術当日は無理せず安静に過ごしましょう。可能であれば、施術部位を保冷剤などで軽く冷やすと、腫れや痛みを和らげるのに役立ちます(ただし冷やしすぎには注意が必要です)。

クリニックから処方された抗生剤や鎮痛剤、その他の薬剤があれば、医師の指示通りに必ず使用してください。

洗顔やメイクは多くの場合、施術翌日から可能ですが、施術部位を強くこすったり、圧迫したりしないように優しく行うことが大切です。

約1ヶ月間は顔のマッサージやエステ、うつぶせ寝、歯の治療(大きく口を開ける必要があるため)、激しい運動やサウナなど、顔に強い圧力がかかったり、血行が過度に促進されたりするような行為は避けるようにしましょう。

万が一のトラブル時の対応

通常、糸リフト後の症状は時間とともに改善しますが、もし施術後に以下のような通常とは異なる症状が現れた場合は、自己判断せずに速やかに施術を受けたクリニックに連絡し、医師の診察を受ける必要があります。

例えば、痛みが日ごとに強くなる、腫れが異常に長引く、施術部位が赤く腫れて熱を持っている(感染の兆候)、皮膚から糸が出てきた、明らかに左右差が目立つ、皮膚に強い凹凸や引きつれが残っている、などです。

早期に適切な対処を行うことで問題を最小限に抑え、重篤な合併症を防ぐことが可能です。

信頼できるクリニックであれば、通常、術後のフォローアップ体制が整っており、緊急時の連絡先や対応方法について事前に説明があります。

施術を受ける前に万が一の場合の連絡方法や対応について確認しておくと、より安心して治療に臨むことができるでしょう。

よくある質問

糸リフトに関して、患者様から多く寄せられる質問とその回答をまとめました。

施術中の痛みはどの程度ですか?

多くの方が心配される施術中の痛みですが、糸リフトでは通常麻酔を使用するため、痛みは最小限に抑えられます。一般的には、麻酔クリームによる表面麻酔と、局所麻酔の注射を組み合わせて行います。

局所麻酔の注射の際にはチクッとした針の痛みを感じますが、麻酔が効いてしまえば、糸を挿入したり引き上げたりする操作中に痛みを感じることはほとんどありません。

術後に麻酔が切れてくるとジンジンとした痛みや鈍い痛み、違和感が出ることがありますが、通常はクリニックから処方される鎮痛剤で十分にコントロールできる程度です。

痛みの感じ方には個人差がありますので、もし痛みに非常に弱い、あるいは不安が強いという方は、カウンセリングの際に遠慮なく医師に相談してください。笑気麻酔など、追加の麻酔オプションを検討できる場合もあります。

効果はどのくらい持続しますか?

糸リフトの効果の持続期間は、一概に「何年」と言い切ることは難しく、様々な要因によって変動します。

最も大きな要因は、使用する糸の種類(素材や形状)です。素材によって体内で吸収されるまでの期間が異なり、PDO糸で約半年~1年、PLLA糸で約1年半~2年、PCL糸では約2年~3年が一般的な目安とされています。

また、挿入する糸の本数が多いほど、あるいはコグがしっかりした糸を使用するほど、リフトアップ効果の持続期間は長くなる傾向があります。

さらに、患者様自身の肌質やたるみの程度、年齢、代謝の速さ、そして喫煙習慣や体重の変動といった生活習慣なども持続期間に影響を与えます。

物理的なリフトアップ効果は糸が吸収されるとともに徐々に薄れていきますが、糸の刺激によって生成された自己コラーゲンによる肌の引き締め効果は、糸がなくなった後もある程度持続すると考えられています。

効果をできるだけ長く維持するためには、定期的なメンテナンスとして追加の施術を受けたり、他の美容施術(HIFUなど)を組み合わせたりすることも有効な場合があります。

他の美容施術との組み合わせは可能ですか?

はい、糸リフトは他の多くの美容施術と組み合わせることが可能です。むしろ、組み合わせることで、単独の治療では得られない相乗効果が期待でき、より総合的なアンチエイジング効果を目指せる場合があります。

例えば、糸リフトでたるみを引き上げた上で、ヒアルロン酸注入によって失われたボリュームを補ったり、深いシワを埋めたりすることができます。

また、HIFU(ハイフ)やRF(高周波)などのエネルギーデバイスによる治療で皮膚全体の引き締めを図った後に、糸リフトでさらにリフトアップ効果を高めるという組み合わせも人気があります。

ボツリヌス治療と併用して、表情ジワの改善やフェイスラインの調整を行うこともあります。

ただし、どの治療をどの順番で、どのくらいの期間を空けて行うのが最適かは、患者様の肌の状態や治療の目的によって異なります。

安全かつ効果的に組み合わせ治療を行うためには、必ず医師とよく相談し、適切な治療計画を立てることが重要です。

何歳くらいから受けるのが適していますか?

糸リフトを受けるのに「何歳からが良い」「何歳までしか受けられない」といった明確な年齢制限はありません。

治療を検討する最も良いタイミングは、ご自身が顔のたるみや変化を自覚し、「改善したい」と感じ始めた時と言えるでしょう。

一般的には、たるみが気になり始めることが多い30代後半から、よりはっきりとしたたるみに悩む方が増える40代、50代、60代くらいの方が多く受けられています。

しかし、20代の方でも、骨格的な要因で頬がたるんで見えやすい方や、急激なダイエット後に皮膚のたるみが生じた方、あるいは将来のたるみを予防したいという目的で、早期から糸リフトを希望されるケースもあります。

重要なのは実年齢そのものよりも、現在のたるみの程度、皮膚の質(厚さや弾力性)、そしてご本人がどの程度の改善を望んでいるかです。

カウンセリングで医師が診察し、糸リフトがその方にとって適切な治療法(適応)であるかどうかを個別に判断します。

年代別 糸リフト検討のポイント(目安)

年代主な悩み・目的例期待される効果例
20代後半~30代たるみ予防、初期のたるみ、小顔効果フェイスライン維持、軽度の引き締め
40代~50代明確なたるみ(頬、フェイスライン)、ほうれい線しっかりとしたリフトアップ、肌質改善
60代以上全体的な強いいたるみ、深いシワ無理のない範囲でのリフトアップ、現状維持

年齢に関わらず、まずは専門の医師に相談してみることをお勧めします。

参考文献

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