切開リフトで顔面神経麻痺が起きることはありますが、頻度は低く、顔を動かす神経の損傷は0.66%(1000件に7件ほど)、長く残るものは0.047%(1万件に5件ほど)と推定されています1)。
多くは一時的な不調で回復に向かいますが、長く残る場合もあります。術後に顔の一部が動かしにくいと感じたら、早めに手術を受けた医療機関へ連絡してください。
手術前に聞いておきたいのは、麻痺の頻度だけでなく、症状が出たときの連絡先と、回復が乏しいときの紹介先です。
医学博士
2014年 日本形成外科学会 専門医取得
日本美容外科学会 会員
【略歴】
獨協医科大学医学部卒業後、岩手医科大学形成外科学講座入局。岩手医科大学大学院卒業博士号取得、2014年に日本形成外科学会専門医取得。大手美容クリニックの院長を経て2017年より百人町アルファクリニックの院長を務める。
百人町アルファクリニックでは、糸を使った切らないリフトアップから、切開部分が目立たないフェイスリフトまで患者様に適した方法をご提案していますが、若返り手術は決して急ぐ必要はありません。
一人ひとりの皮下組織や表情筋の状態に合わせた方法を探し「安全性」と「自然な仕上がり」を第一に心がけているため、画一的な手術をすぐにはいどうぞ、と勧めることはしていません。
毎回手術前の診断と計画立案に時間をかけすぎるため、とにかく安く、早くこの施術をして欲しいという方には適したクリニックではありません。それでも、リフトアップの施術を年間300件行っている実績から、患者様同士の口コミや他のドクターからのご紹介を通じ、全国から多くの患者様に当院を選んでいただいています。
このサイトでは、フェイスリフトやたるみに関する情報を詳しく掲載しています。どうか焦らず、十分に勉強した上で、ご自身に合ったクリニックをお選びください。もちろん、ご質問やご相談があれば、いつでもお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。
フェイスリフトの顔面神経麻痺は、どのくらい起きる?
運動神経、つまり顔の筋肉を動かす神経の損傷は、67本の論文をまとめた解析で0.66%と推定されています1)。長く残る損傷の推定値は0.047%とさらに低く、損傷の多くは一時的な不調にとどまります。
0.66%は、約1000件に7件に相当する
0.66%は、手術約1000件に対して約7件に相当する割合です1)。0.66%には一時的な損傷も含まれるため、長く残る損傷の0.047%と足して発生率とするのは誤りです。
| 運動神経の損傷 | 推定された割合 | 数値が示す範囲 |
|---|---|---|
| 全体 | 0.66% | 一時的な損傷も含む |
| 長く残る損傷 | 0.047% | 各研究で長く残ると判断された損傷だけ |
研究によって0.5〜5%と幅が出る
別の20本の研究をまとめた報告では、顔面神経損傷の頻度は0.5〜5%でした2)。
軽い動かしにくさまで数えるか、どの時点まで診察するかで、記録される件数は変わります。0.66%と0.5〜5%の差も、どちらかが誤りというより、数え方の違いから出たものと考えるのが自然です1,2)。
数字を見るときは、何を麻痺として数えたのか、一時的なものを含むのか、いつまで経過を追ったのかを確かめます。一時的なものも数えた0.66%と、長く残るものだけの0.047%のように、数え方しだいで数字は大きく変わります1)。
術後すぐの麻痺が長く残るかは、その後の回復で分かる
長く残る運動神経損傷の0.047%は、約1万件に5件に相当する推定値です1)。一方、術後すぐに動かしにくさが出た段階では、その症状が長く残るかどうかはまだ分かりません。
回復の判断には、最初の症状の強さだけでなく、その後に動きが戻っているかも関わります。
手術を決める前なら発生率の低さに安心できますが、症状が出たあとは、数字より診察で自分の神経の状態を確かめるほうが先です。
神経は耳の前から分かれ、顔の筋肉へ届く
顔面神経は、耳の前付近から枝分かれして筋肉へ向かい、場所によって皮膚からの深さが変わります。切開リフトでは組織を剥がして引き上げるため、神経が浅いところを通る場所では、とくに慎重な操作が求められます。
「動かしにくい」と「触った感覚が鈍い」は別の症状
顔面神経は、筋肉へ動くための信号を届ける神経です。その働きが低下すると、まゆを上げる、目を閉じる、口を動かすといった動作の一部が弱くなることがあります。
一方、触った感じを伝えるのは感覚神経で、顔を動かす神経とは別の神経です。
「しびれる」とだけ言うより、「触れた感じが鈍い」「口を動かすと片側が動きにくい」のように、動作や感覚を具体的に言うほうが、診察で正確に伝わります。神経の種類を自分で見分ける必要はなく、困っていることをそのまま話せば十分です。
まゆや口元へ向かう枝は、途中で深さが変わる
神経は、耳下腺という耳の前にある唾液を作る組織を出たあと、深い部分を通り、筋肉に入る手前で浅くなります。そのため、顔の表面から見た位置だけでは神経までの距離は分からず、手術でどの深さの組織を扱うかによっても変わります。
| 神経の枝 | 主に向かう筋肉 | 位置についての注意点 |
|---|---|---|
| 前頭枝・側頭枝 | 額やまゆを動かす筋肉 | 頬骨からこめかみへ向かう付近で浅くなる |
| 下顎縁枝 | 口角や下唇を下げる筋肉 | 枝分かれに個人差があり、深さの確認が必要 |
額へ向かう枝が深い部分から浅い部分へ移る様子は、献体の半顔36標本を調べた解剖研究で確認されています。ただし、神経が通る位置には個人差があり、標本から得られた距離は平均的な目安です。
切断だけでなく、引っ張る力でも働きが弱まる
神経の働きは、直接の損傷だけでなく、引っ張られる力や圧迫の影響でも低下することがあります。切開リフトでは皮膚やその下の組織を剥がして位置を整えるため、神経の近くを操作するときに注意が要ります。
つまり、麻痺が出たからといって、神経が切れているとは限りません。
神経に加わった影響が一時的なのか、線維まで傷ついているのかによって、その後の見通しは変わります。原因を絞るときに医師が見る点の1つは、動かしにくい部分が手術で扱った場所と重なるかどうかです。糸を使う施術は操作が異なるため、糸リフトによる顔面神経麻痺の原因と予防で別に説明しています。
フェイスリフトの顔面神経麻痺は、一時的な不調が多い
術後の麻痺は、神経の信号が一時的に通りにくくなる軽い型が多いとされています。ただし、長く症状が残ることもあり、回復の見通しは神経の傷つき方によって異なります。
軽い型では、神経の信号が一時的に通りにくくなる
ニューロプラキシアは、神経そのものが切れずに、信号を伝える働きが一時的に弱くなる状態です。引っ張られる力などで起こり、多くは神経をつなぎ直す手術をせずに回復へ向かいます。
ただし、「軽い」というのは神経の傷つき方のことで、生活の不便や不安を強く感じる人もいます。
経過をみるうえで大事なのは、動きが少しでも戻り始めているかどうかです。1回の診察だけでは回復の速さまでは分からないため、診察を重ねて変化を比べながら、見守ってよいか、別の対応が要るかを判断していきます。
気づいた時点で受診し、6か月をめどに回復を見る
治療後の経過をまとめた報告では、ステロイドやリハビリなどを受けた患者さんの70%が6か月以内に完全に回復しています2)。ステロイドは炎症を抑える薬、リハビリは顔の状態に合わせて動かし方などを調整する治療です。
| 経過の段階 | 確かめたいこと | 対応 |
|---|---|---|
| 症状に気づいた時点 | 動かしにくい場所と、気づいた時刻 | 回復を待つより、まず受診 |
| 診察を続ける期間 | 動きが戻る兆しと、困る動作の変化 | 変化に合わせて治療方針を決める |
| 改善が乏しいと判断されたとき | 損傷の程度と、追加の対応 | 日数だけで決めず、専門的な診察を相談 |
この70%は、切開リフトを受ける全員に当てはまる回復率でも、特定の薬だけの効果でもありません2)。回復期間には幅があるため、6か月という数字を理由に、診察を受けずに待つことは避けてください。
神経の線維まで傷つくと、回復に時間がかかる
神経の中で信号を運ぶ線維が傷ついた場合は、一時的な働きの低下よりも回復に時間がかかります。また、神経そのものが切れた疑いがあれば、神経の状態を直接確かめ、修復する手術が検討される場合もあります。
対応を決めるうえで見るのは、経過した日数だけでなく、切断が疑われるかどうかと、回復の兆しがあるかどうかです。
早くから動きが戻る場合には経過観察、切断が疑われる場合には神経の状態を確かめる手術が検討されます。ただし、回復の見通しは患者さんごとの状態で異なり、同じ経過をたどるとは限りません。症状が続く場合も「もう治らない」と自分で決めず、現在の状態に合う治療を相談してください。
回復を待つ間も、診察で確かめたい変化がある
回復を待つ場合も、診察は続きます。動きの戻り方を見てもらうほか、目が閉じにくいなど、日常生活で困る症状にも対応してもらえます。
目が閉じにくいときは、早めに連絡を
術後に新たな動かしにくさが出た場合は、その時点で手術を受けた医療機関へ連絡してください。とくに目が十分に閉じられないときは、目の表面を守る方法も診察で相談します。
連絡時には、「いつから」「どの動作で困るか」「時間とともに変わったか」の3つを伝えます。
- 動かしにくさに気づいた時刻とその後の経過をメモしておくと、診察で伝えやすいです。
- まゆを上げる、目を閉じる、口を動かすといった動作のうち、どれがしにくいかを確かめておきます。
- 目の乾きや痛み、飲み物がこぼれるといった日常の困りごとも、診察で話して大丈夫です。
手術後の診察予定があっても、新しい症状が出たときは、その時点での相談が先です。症状の経過を伝えて、予定日まで待ってよいか、その前に受診するかを確かめます。
薬やリハビリは、傷つき方に合わせて選ぶ
麻痺への治療は、損傷の程度と経過に合わせて決まります。一時的な働きの低下であれば、経過観察や薬、リハビリが中心になる一方、切断が疑われる場合は、早い段階で修復するかどうかを決める必要があります。どの麻痺にも同じ薬や訓練が当てはまるわけではありません。
薬を使うかどうかは、期待する働きだけでなく、副作用や持病との兼ね合いでも決まります。薬の名前だけを見て自己判断で飲むのではなく、今の症状になぜその薬を使うのかを、処方のときに確かめておくと安心です。
顔の運動やマッサージについても、傷の状態と神経の回復に合わせた開始時期や方法を、診察で確かめてください。
ボツリヌス毒素の注射は、回復を待つ間に左右差を和らげる
ボツリヌス毒素は、筋肉の働きを一時的に弱める薬で、麻痺していない側に注射し、左右の動きの差を和らげる目的で用いられることがあります。これは神経を治す治療ではなく、回復を待つ間などの補助的な対応です。
この注射で左右差が和らぐことはありますが、効果の大きさや適した時期には、まだ分かっていない点が残ります。また、早い時期に注射したあとで神経が早く回復すると、今度は反対向きの左右差が出る場合もあります。注射は早いほどよいとは言えず、自然な回復の速さによっては待つほうがよい場合もあるのが、難しいところです。
注射の対象や時期は、現在の動きと回復の見通しを診察で確かめたうえで決まります。
神経への負担は、扱う深さと操作する場所で変わる
「深く剥がす手術ほど麻痺が増える」とは、単純には言えません。神経への影響には、扱う深さに加え、神経が浅くなる場所での操作や、対象となる患者さんの条件が関わります。
SMASを剥がす方法では、一時的な損傷の報告が多い
SMASは、皮膚の下にある筋膜という膜状の組織です。切開リフトには、この組織を折りたたんで縫い縮める方法や、剥がして引き上げる方法などがあり、動かす組織と範囲が異なります。
183本の研究をまとめた解析では、一時的な神経損傷は、SMASを高い位置で剥がす方法で1.85%、皮膚とSMASを一体で剥がす方法で1.52%でした3)。いずれも折りたたんで縫い縮める方法より統計的に多い結果でしたが、長く残る損傷には方法による差が認められていません。
深い層から剥がす方法でも、長く残る損傷は起こりうる
深い層から剥がす方法は、皮膚より深い部分で組織を剥がして引き上げる術式です。長く残る損傷が集計上0例でも、将来の手術で起こる確率が0という保証にはなりません。
| 深い層から剥がす方法の集計 | 結果 | 知っておきたいこと |
|---|---|---|
| 対象 | 45本の研究、10,784人 | この術式を受けた人の数字 |
| 一時的な顔面神経損傷 | 推定1.2% | ほかの集計と比べて何倍とは言えない |
| 長く残る顔面神経損傷 | 報告は0例 | 起こらないという意味ではない |
受ける理由と、神経への配慮を一緒に確かめる
術式を選ぶときは、希望する変化に対してなぜその方法をすすめるのか、理由を説明してもらいましょう。傷の長さや術式の名前だけでなく、どの範囲の組織を動かす予定か、神経に近い場所でどんな注意を払うのかも聞いておくと、一般的な数字ではなく自分の手術として考えられます。ただ、丁寧な説明を受けても合併症の可能性は残るため、「麻痺が起きたらどこで診てもらい、どこへ紹介されるのか」まで確かめておくと安心です。
神経以外の合併症は、リフトアップ整形のデメリットとリスクにまとめています。
切開リフト前に確かめたい、麻痺への備え
以前に顔の手術を受けた人は、その内容を術前に伝えておけば、神経に配慮した手術の計画を立ててもらえます。初めての手術でも先に確かめておきたいのは、術前の顔の動きと、術後に困ったときの連絡方法です。
過去に受けた顔の手術は、必ず伝えておく
2回目以降の切開リフトでは、前の手術による傷あとが硬くなり、皮膚の下の境目が分かりにくくなる場合があります。SMASが薄くなったり、もろくなったりする変化も、再手術で報告されている特徴です。
そのため、前回の手術の時期や方法、術後に動かしにくさがあったかどうかも、診察でそのまま伝えます。
再手術では、組織の状態によって手術の負担が変わるため、合併症の起こりやすさを全員に共通する数字で示すのは困難です。再手術かどうかだけで考えず、これまでの治療と今の状態から見た麻痺の見通しを聞くほうが確かです。手術記録が手元にある場合は持参し、分かる範囲の治療歴を伝えてください。
術前の動きを残すと、術後の比較がしやすい
手術前から顔の動きに左右差がある人もいます。手術前にその左右差を診察で記録しておけば、術後の変化が新しく起きたものかどうかを見分けられます。
確認する動作は、まゆを上げる、目を閉じる、口を動かすなどです。過去に顔面神経麻痺になった経験や、今も動かしにくい部分があれば、術前の診察で伝えてください。症状が治まっていても、いつ、どの部分に起きたかは記録として残しておきます。
術前の動きを写真や動画で残すのか、術後にそれとどう見比べるのかも、手術前に聞いておきたいところです。
「起きたらどうするか」まで聞いてから決める
手術前の相談では、発生率だけでなく、症状が出たときに何をすればよいかまで確認しておくのが確実です。夜間や休診日の連絡方法も聞いておけば、困ったときに相談先を探さずに済みます。
術後に顔が動かしにくいと気づいたときのために、手術を受ける医療機関の連絡先を保存し、電話などの連絡手段と、夜間・休診日に連絡がつかない場合の相談先も手術前に聞いておきましょう。連絡時に伝える症状や経過は、メモの項目にしておくと便利です。受診時には顔のどの動きを確認するのか、術前の記録とどう比べるのか、今の状態や回復の見通し、次の診察までに気をつける変化についてどんな説明を受けられるかも確かめておきます。
- 説明している麻痺の頻度は、一時的なものを含む数字ですか?
- 術後に顔が動かしにくくなった場合、どこに連絡し、いつ受診すればよいですか?
- 回復が乏しい場合、顔面神経を診療する専門施設への紹介は受けられますか?
頻度が低いと聞いても、顔が動かなくなるかもしれないという不安が残る人はいます。その不安も医師に伝え、期待できる変化とリスクを比べてから、手術を受けるかどうかを決めます。説明に疑問が残る場合は、手術日を決める前にもう一度相談してください。
よくある質問
- 切開リフトによる顔面神経麻痺は、必ず治りますか?
-
一時的な働きの低下であれば回復が期待できますが、長く症状が残る損傷も報告されています。見通しを左右するのは、神経の傷つき方と、その後に動きが戻るかどうかです。回復を約束できる数字はないので、自分の状態に合わせた説明を診察で受けることが先です。
- 切開リフト後の顔面神経麻痺は、6か月まで待ってから相談してよいですか?
-
6か月を待たず、症状に気づいた時点で相談してください。6か月は、回復の様子を見る期間の目安です。
とくに目が閉じにくい場合や、動かしにくさが強まる場合は、早めの連絡が必要です。
- 切開リフトによる顔面神経麻痺は、どの手術方法でも同じ頻度ですか?
-
一時的な神経損傷の起こりやすさは、手術方法によって異なる可能性があります。ただし、術式名だけで個人の危険度を決めるのは困難です。術前には、その方法をすすめる理由と、神経への配慮について医師に確かめておきます。
- 切開リフト後の顔面神経麻痺は、左右差を整える注射で治せますか?
-
この注射は、麻痺していない側の筋肉の働きを弱めて左右差を和らげるもので、神経そのものの回復を促す治療とは別です。早い時期に注射したあとで神経が回復すると、反対向きの左右差が出る場合もあります。
注射を行うかどうかと時期は、現在の動きと回復の経過しだいです。
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